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よしなしごとども 書きつくるなり
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天童荒太(文藝春秋社)

 日本中を旅する静人、その目的は死者を悼むことだった。彼の噂を聞いて近付く雑誌記者・蒔野。彼と偶然出会って、彼と行動を共にする女・倖世。それぞれの思いが交錯していく中、ガンに侵された静人の母・巡子のタイムリミットも刻々と迫る……。

 登場人物が誰も疎かにされることなく丁寧に描かれているところに、まず好感を覚えた。それは取りも直さず、静人の悼む姿勢にも通じるものがある。
 事故、自殺、他殺、どんな死に方をした人であっても、静人は自らの心に、彼らが確かに生きたということを刻もうとする。しかも、きっと誰かには愛された、きっと誰かには感謝された、そういうプラス面だけを見ようとするのだ。

 物語を読みながら、私も蒔野や倖世のように、静人の行動を訝しんだり、偽善の感情を探し出そうとしたりした。しかし読み進むうちに彼の、「亡くなった人を、他の人とは代えられない唯一の存在として覚えておきたい」という厳粛な想いに偽りは無いのだと判った。
 誰かもその詩の中で書いたではないか、「死んだ女よりもっと哀れなのは忘れられた女です」と。彼の悼みは、死者が最も欲しているものなのかもしれない。
 どんなに冷酷無比な人間でも、一度は蜘蛛を助けたかもしれない……悼むことに値しない人間などいない……そんなことも、ふと思った。
95点
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天童荒太(筑摩書房)

 高校生の笑美子は、数人の友人といっしょに「包帯クラブ」の活動を始める。
 誰かが傷付いた場所に行き、包帯を巻く。その「手当て」によって、傷は傷として認められ、目には見えない出血が止まるような気がした……。

 このアイディアはすごい、と読んでる最中、単純に思った。
 誰しもいろいろな傷を受けながら生きている。が、声高に「傷付きました」と言うことにはためらいがある。「そんなことで」と他人には思われそうだから。
 その微妙な部分を認めることで、心が少し慰められるというのは、至極わかりやすい。

 それから、笑美子たちが使う各地の方言がいい。仲間うちの暗号のような使われ方をしているのだが、イマドキの高校生の話し言葉でこの物語が進んだら、きっと興醒めしただろう。
 所々に挟まれる現状報告も良かった。彼女たちの「その後」もまた興味深く読むことができた。
80点
天童荒太(新潮社)

 コンビニでバイトをしながら音楽に情熱を燃やす潤平。そのコンビニに連続強盗犯が押し入り、女性刑事風希が捜査に当たる。
 事件があったときに店内にいた、不審な男性客が共犯者として捜査線上に浮かぶが、実はその男は連続殺人犯であった……。

 筋も登場人物のキャラクターも分かりやすく、とても読みやすかった。
 ただ、このての小説があまりにも多いせいか、結末は予想通りで目新しさはなかった。
 「孤独」について風希が語るシーンがあるが、それも当たり前すぎて少し失望した。
70点
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