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よしなしごとども 書きつくるなり
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高野和明(講談社)

 仮釈放中の青年と、退職間近の刑務官。二人は冤罪で死刑になりかけている男を救うため、十年前の事件を調べ始める。

 非常に分かりやすい筋立てである。そのくせ真犯人は、幾重にも折り重なった仕掛けの奥底にいて、なかなか正体を見せない。そのバランス感覚に舌を巻いた。
 「過去」という章では、刑務官の仕事振りが語られるが、死刑執行の様子は空恐ろしいほどのリアリティがある。「執行する側」の苦悩の深さに慄然とした。
 抑制された文体に、読み手の緊張感は持続し、読み出したら止まらない作品である。
90点
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高橋源一郎(集英社)

 アダルトビデオの監督の日常。
 カマトトぶる気はさらさらないのだが、この世界はついていけそうにない。特にスカトロの部分は、目が逃げてしまい読み飛ばさざるを得なかった。
 AVって、本当にこうなのだろうか。何でもアリ、なのだろうか。
 もしそうなら、供給があるってことは需要もあるってことなのだろうか。
 と、疑問だらけで読み進めていったら「エピローグ」ではとんでもない問題が提起されていた。
 作者の言いたいことはここに集約されているようだ。
50点
高村薫(文藝春秋社)

 雑文集。読売、毎日、日本経済新聞などに発表された文が多い。
 高村氏というのは、その作品どおり、考え方の硬いかたのようだ。それは悪い意味ではなく、きまじめというほどの意味である。
 日本語の衰えを憂え、狭くてモノが溢れている住宅環境を憂え、一人で食事をする子供たちの生活を憂える。きまじめゆえの、心配性でもあるらしい。

 硬い話題が多い中で「折々の花」という一文が目をひいた。小さい頃、夏といえばカンナ、ダリア、きんせんかなどの花が路地に咲いていた。今はほとんどそれらを見掛けない、という話。
 花にも流行り廃りがあるのだろうか。
65点
高村薫(講談社)

 昭和51年の南アルプス。ある家族は一家心中を図り、子供だけが生き残る。またある男は狂気と混乱の果てに、登山者を撲殺してしまう。さらにもう一つ、重大な事件が起きていた……16年後に連続殺人事件へと発展する、まさに重大なる事件が。

 ひと言で言うと、非常に難しい作品であった。まず警察の機構というものが複雑すぎて把握しきれない。それから、物語の後半では殺人犯・マークスの心情がほとんど描かれていないので、彼の動機は想像するしかなく、常に「何故彼はそうしたのか」という疑問が付きまとう。
 しかしながら、読む進む上でのそんな困難を補って余りある魅力が本作品にはある。主人公の刑事、合田の苦悩や焦燥が存分に描かれていて圧巻であった。彼と他の刑事、事件の関係者との丁々発止のやり取りも、かなり引き込まれた。
70点
高村薫(毎日新聞社)

 上下巻しかも二段組。こういう本をむさぼり読みたいのだ、私は。でも時間と気力が……
 って愚痴はこれくらいにして、面白かった。驚いた。抜群の構成力。警察の、新聞社の、一流企業の内幕を何故こんなにリアルに描けるのであろうか。旋盤についての描写は、模倣犯が出現するのでは? と余計な心配をしてしまうほど。
 いつか再読したい。でも時間と気力が……ってエンドレスだな、こりゃ。
90点
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