染井為人(KADOKAWA)
市役所職員の佐々木守。彼は生活保護の受給者のもとへ出向いて現状を確認するケースワーカーであった。
ストレスが多く、我慢の毎日を送る守だったが、同僚の男が受給女性に肉体関係を迫っていると知り、真相を突き止めようとするが……。
なんて胸糞の悪い小説! と投げ出しそうでした。
クズとワルしか出てこない、と帯にあったけど、まさに。人はここまで堕ちるんだ、という見本市のような世界。
良心は踏みにじられ、正直者がバカをみる……リアルでもこういうことが起きているんでしょうね。
あれだ、貧困ビジネス。やっている輩はこの小説を読んだらいいと思うぞ。それがどんだけ醜悪かってことをよぉく描いてる作品だから。
70点
市役所職員の佐々木守。彼は生活保護の受給者のもとへ出向いて現状を確認するケースワーカーであった。
ストレスが多く、我慢の毎日を送る守だったが、同僚の男が受給女性に肉体関係を迫っていると知り、真相を突き止めようとするが……。
なんて胸糞の悪い小説! と投げ出しそうでした。
クズとワルしか出てこない、と帯にあったけど、まさに。人はここまで堕ちるんだ、という見本市のような世界。
良心は踏みにじられ、正直者がバカをみる……リアルでもこういうことが起きているんでしょうね。
あれだ、貧困ビジネス。やっている輩はこの小説を読んだらいいと思うぞ。それがどんだけ醜悪かってことをよぉく描いてる作品だから。
70点
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末井昭(朝日出版社)
小学生のときに、母親をダイナマイト自殺で亡くした筆者。死について、自殺についてのエッセイ。
これは微妙だ。筆者は真面目な顔してふざけるタイプとみえて、さらりとひどいことを書く。まぁエッセイなので、何を書こうが勝手なのだが。
ひとまず筆者の人となりは置いておいて、数々の自殺に関するインタビューが興味深かった。
「秋田県の憂鬱」。自殺率(人口に占める自殺者の割合)が、常に上位の秋田県。
決定的な理由は謎だが、NHKの受信料の支払い率が高い秋田県、見栄っぱりな部分があるのでは? という考察にはうなってしまった。
あるいは青木ヶ原樹海について。作家で樹海を歩く仕事をしていた早野梓氏のインタビュー。
磁石が狂う、というのはヤラセであること。怪しい人には話し掛けて、相手が笑えばしめたもの、結局みんな迷っている……切ない話ではある。
寝る前に少しずつ読んだが、かなり夢見が悪かった。昼間、読むべき本かもしれない。
これは微妙だ。筆者は真面目な顔してふざけるタイプとみえて、さらりとひどいことを書く。まぁエッセイなので、何を書こうが勝手なのだが。
ひとまず筆者の人となりは置いておいて、数々の自殺に関するインタビューが興味深かった。
「秋田県の憂鬱」。自殺率(人口に占める自殺者の割合)が、常に上位の秋田県。
決定的な理由は謎だが、NHKの受信料の支払い率が高い秋田県、見栄っぱりな部分があるのでは? という考察にはうなってしまった。
あるいは青木ヶ原樹海について。作家で樹海を歩く仕事をしていた早野梓氏のインタビュー。
磁石が狂う、というのはヤラセであること。怪しい人には話し掛けて、相手が笑えばしめたもの、結局みんな迷っている……切ない話ではある。
寝る前に少しずつ読んだが、かなり夢見が悪かった。昼間、読むべき本かもしれない。
45点
白石一文(角川書店)
東大卒で一流企業に勤める橋田。
彼はふとしたことで香折という女性と出会う。複雑な家庭に育ったという香折を知るにつけ、橋田は彼女のことが頭から離れなくなる。いっぽうで、彼は社長の姪である女性との交際も続けるのだった。
どいつもこいつも超エリート、美男美女で、最初は物語に感情移入できなかった。
だが読み進むうちに、登場人物たちの本音が透けてみえてきて、気付いたら夢中になって読んでいた。
主人公の橋田というのは、実は非常に危険な男で、その根底にあるのは冷たさだと私は思った。
最終的に一人の女性を彼は選ぶのだが、それは優しさゆえでは決して無い。彼の執着心がそうさせたような気がして、なんだか薄ら寒い気持ちになってしまった。
75点
東大卒で一流企業に勤める橋田。
彼はふとしたことで香折という女性と出会う。複雑な家庭に育ったという香折を知るにつけ、橋田は彼女のことが頭から離れなくなる。いっぽうで、彼は社長の姪である女性との交際も続けるのだった。
どいつもこいつも超エリート、美男美女で、最初は物語に感情移入できなかった。
だが読み進むうちに、登場人物たちの本音が透けてみえてきて、気付いたら夢中になって読んでいた。
主人公の橋田というのは、実は非常に危険な男で、その根底にあるのは冷たさだと私は思った。
最終的に一人の女性を彼は選ぶのだが、それは優しさゆえでは決して無い。彼の執着心がそうさせたような気がして、なんだか薄ら寒い気持ちになってしまった。
75点
白石公子(集英社)
郵便局に勤める直毅。彼には、実のりと穂のかという双子の妹がいた。不倫の恋に苦しむ実のり。専門学校を辞めて、小劇団に入りたいという穂のか。
事故死した両親に代わって、妹たちを守りたいと思う直毅だが、自らの恋愛問題に思い悩む日々であった……。
途中までは、とても面白く読むことができた。が、直毅が茜と葉子という二人の女性に、同時に好意を持つあたりから、俄然いやなムードが漂いはじめた。ん? もしかして? こいつ女々しいだけのやつ?
それはやがて確信に変わった。こっちがダメならあっちの女。寂しさや苦しさから逃れるためだけに、女性を利用するとは、見下げ果てたヤツだ。
だいたい、妹たちに対する感情が、兄弟愛を超えてやしまいか。そう考えると、タイトルさえ不気味に思えてくる。
60点
郵便局に勤める直毅。彼には、実のりと穂のかという双子の妹がいた。不倫の恋に苦しむ実のり。専門学校を辞めて、小劇団に入りたいという穂のか。
事故死した両親に代わって、妹たちを守りたいと思う直毅だが、自らの恋愛問題に思い悩む日々であった……。
途中までは、とても面白く読むことができた。が、直毅が茜と葉子という二人の女性に、同時に好意を持つあたりから、俄然いやなムードが漂いはじめた。ん? もしかして? こいつ女々しいだけのやつ?
それはやがて確信に変わった。こっちがダメならあっちの女。寂しさや苦しさから逃れるためだけに、女性を利用するとは、見下げ果てたヤツだ。
だいたい、妹たちに対する感情が、兄弟愛を超えてやしまいか。そう考えると、タイトルさえ不気味に思えてくる。
60点
城山三郎(新潮社)
妻を喪った夫・城山氏が、彼女との出会いから別れまでを綴った手記。
城山氏といえば、お堅い経済小説のイメージがあるが、この本を読んでそれががらりと変わった。奥様のことが心底好きでいとおしく思う、優しい男性だったのだ。
まず出会いのシーンが圧巻。とある図書館の前で、偶然出会う二人。「間違って、天から妖精が落ちて来た感じ」。一度でいいから、男性にこんなふうに思われてみたいものである。
結婚後も、茶目っ気のある奥様に幾度と無く救われる城山氏。女は愛嬌とはよく言ったものだ。
そして悲しい別れ。彼の憔悴しきった姿は、「父が遺してくれたもの」という、巻末の次女の手記で明らかになるのだが、それがまた涙を誘う。
夫にここまで愛される妻、羨ましくもあり、自分とギャップがありすぎて不思議な感じも、正直した。
85点
妻を喪った夫・城山氏が、彼女との出会いから別れまでを綴った手記。
城山氏といえば、お堅い経済小説のイメージがあるが、この本を読んでそれががらりと変わった。奥様のことが心底好きでいとおしく思う、優しい男性だったのだ。
まず出会いのシーンが圧巻。とある図書館の前で、偶然出会う二人。「間違って、天から妖精が落ちて来た感じ」。一度でいいから、男性にこんなふうに思われてみたいものである。
結婚後も、茶目っ気のある奥様に幾度と無く救われる城山氏。女は愛嬌とはよく言ったものだ。
そして悲しい別れ。彼の憔悴しきった姿は、「父が遺してくれたもの」という、巻末の次女の手記で明らかになるのだが、それがまた涙を誘う。
夫にここまで愛される妻、羨ましくもあり、自分とギャップがありすぎて不思議な感じも、正直した。
85点