川上弘美(朝日新聞出版)
さよと仄田くんはともに小学4年生。ふたりは図書館で見つけた『七夜(ななよ)物語』という本の世界に入り込む。巨大ねずみのいる世界、心地よくて、とても眠たくなる世界、さよが生まれる前の、若い頃の父と母がいる世界……ふたりは七つの夜を旅する。
上巻の帯には「本格長編ファンタジー」と書かれている。それでどうしても「ハリー・ポッター」を思い出してしまう。あれに比べたら、この作品はなんて地味で慎ましやかなのだろう。でもそこがいい。小さな箱にきっちりと詰められた上質な和菓子のようで、とてもいい。
そして下巻の帯には「児童文学の新たな金字塔」と書かれている。しかし著者は子どもが読むことを念頭に置いていないのではないだろうか。「とても」と書けばいいところを「たいそう」と、「きちんとした」と書けばいいところを「折り目正しい」と書いてある。大人の鑑賞に堪えうる、美しい日本語で書かれている。その選ばれし言葉たちを、私は存分に楽しんだ。
手放しで「面白い!」とはいえない作品だが、静かに心を揺さぶる作品ではあった。
80点
さよと仄田くんはともに小学4年生。ふたりは図書館で見つけた『七夜(ななよ)物語』という本の世界に入り込む。巨大ねずみのいる世界、心地よくて、とても眠たくなる世界、さよが生まれる前の、若い頃の父と母がいる世界……ふたりは七つの夜を旅する。
上巻の帯には「本格長編ファンタジー」と書かれている。それでどうしても「ハリー・ポッター」を思い出してしまう。あれに比べたら、この作品はなんて地味で慎ましやかなのだろう。でもそこがいい。小さな箱にきっちりと詰められた上質な和菓子のようで、とてもいい。
そして下巻の帯には「児童文学の新たな金字塔」と書かれている。しかし著者は子どもが読むことを念頭に置いていないのではないだろうか。「とても」と書けばいいところを「たいそう」と、「きちんとした」と書けばいいところを「折り目正しい」と書いてある。大人の鑑賞に堪えうる、美しい日本語で書かれている。その選ばれし言葉たちを、私は存分に楽しんだ。
手放しで「面白い!」とはいえない作品だが、静かに心を揺さぶる作品ではあった。
80点
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