忍者ブログ

猫を抱いて象と泳ぐ

小川洋子(文藝春秋社)

 寡黙な少年は、回送バスに住む「マスター」と出会い、チェスの手ほどきを受ける。少年はチェスに魅入られ、その奥義に触れ、それからの人生をチェスとともに歩む。
 いろいろな出会い、別れ。どれだけ時が経とうとも、少年の身体は少年のままで、心はチェスの宇宙を旅していた……。

 チェスの指し方も知らない私だが、それでもこの物語の世界にどっぷり漬かることができた。少年の天才的な才能に胸を躍らせ、「大きくなること=悲劇」と思う少年の心情に胸を痛めた。
 個性的な脇役たちが、またいい。優しくて、身体も心も大きなマスター。伸びやかに、颯爽とチェスを指す老婆令嬢。細く白く透き通る手を持つミイラ。それぞれが少年のことをいとおしく思っていて、その温かい思いが全編を満たしている。
 少年の唇に毛が生えているという設定と、悲劇的なラストはどうにも受け容れ難かったが、それ以外は文句なしの素晴らしい一冊であった。
85点
PR

この記事にコメントする

お名前
タイトル
メール
URL
コメント
絵文字
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
パスワード

カレンダー

07 2025/08 09
S M T W T F S
1 2
3 5 6 7 9
10 11 12 13 15 16
17 18 19 20 22
24 26 27 28 29 30
31

カテゴリー

フリーエリア

最新コメント

[08/27 まきまき]
[08/27 もか]
[08/22 まきまき]
[08/22 ぴーの]
[08/05 まきまき]

プロフィール

HN:
まきまき
性別:
女性

バーコード

ブログ内検索

P R

カウンター

アクセス解析