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よしなしごとども 書きつくるなり
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稲見一良(角川書店)

 筆者が亡くなる直前に書いた短編の数々。
 文庫カバーの裏表紙で泣き、編集者が書いた巻末の「稲見さんのこと」で泣き、解説で泣き、「花の下にて」で泣いた。
 筆者は処女長編が刊行された時点で、すでにガンに侵されていた。それから十年、病魔と闘いながら作品を書いていた。この作品集を書く頃には、腹水が溜まって話すことさえままならない状態だったという。
 そんな事実を踏まえて読む「花の下にて」は、心が震えるような内容であった。
 五十半ばの東條銀次はガンで半年の命と宣告されていた。彼は人里離れたところで静かに暮らしていたが、その裏では殺しを請け負って報酬を得、老妻に金を残そうとしていた……。
 これが泣かずに読めるわけがない。
80点
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