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神の悪手

前回のつづき。
昨日娘のところにやってきました。
倒木で電車が80分も遅れるわ、特急指定席は空いてて2人掛けに1人が多いなか、私の隣には男性客がいるわでもう。
本当にこういう運を持っていないんだなあ。
サラリーマン風の男性、特に嫌な空気は出してなかったけど3分に1回の咳払いには閉口しました。
持ってたのど飴を差し出したかった。

というわけで、図らずも長くなった列車の旅の中で読んだ本が↓こちら。
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芦沢央(新潮社)

短編集。
すべて将棋にまつわる話で、駒の動かし方を知っているだけの私からしたら「へぇ~」なことがもりもりでした。
特に『恩返し』がへぇ~だった。
将棋の駒を作る駒師という職業があることを初めて知りました。
大きな対局の前には、複数ある駒の中からどれかを選ぶという工程があることも初耳でした。
主人公の駒師・兼春とその師匠との関係、駒を選択する立場の国芳棋将の想いが絡まりあって、将棋という世界の奥深さを見せ付けられた気がします。
80点

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悪いものが、来ませんように

芹沢央(KADOKAWA)

紗英は不妊に悩んでいたが、夫は非協力的でしかも浮気している気配があった。彼女は幼い頃から仲がよかった奈津子に頼り切っていた。
奈津子は夫を嫌悪し、しかもサークルなどでも浮いた存在で居場所がなく、明るい紗英を慕っていた。
支えあう二人であったが、やがて紗英の夫が殺されて遺体が山中から発見される……。

この結末は予想外、筆者にまんまと騙された。こういうトリックはきっと昔からあったのだろうが、あまりに描き方が見事だった。
それはさておき。
女性特有の「あるある、だけど見るのも聞くのも嫌」なことがらを、どぉんと目の前に出されてたじろぐシーンがいくつかあった。
紗英の勤める助産院で暴言を吐く女性、「産んでもいないのに何がわかるの?」。
奈津子のボランティアサークルについて彼女自身が仲間たちを「いい歳して女子高生のようにつるんではしゃいでいる」と見下したり。

それから驚くような表現もあった。
誰とでも仲良くなれる起用さを持つ紗英は、学生のころグループで固まるクラスメートたちを不思議に思っていた。と同時にグループ間をまたげる度量が自分にあることに優越感を抱いていた。
優越感? それこそ不思議な感覚、ちっとも羨ましくはない。

というように、ところどころ引っ掛かる表現があって、初見の作家であったが次にはなかなかいかないかもしれない。
80点

何者

浅井リョウ(新潮社)

 就活でつながった5人の男女。ツイッターでの発言を交えながら、それぞれの思いが交錯する。主人公・拓人は、他の4人の虚実とりまぜのツイートを、シニカルな態度で眺めていた。
 やがて内定をもらう者が出始め、5人の関係は微妙に変化していく……。
70点

読んでて本当に苦しかった。主人公がクズなんだもの。友だちが内定を取れば「(会社名) 2ちゃん 評判」なんて検索するようなヤツで。
他の4人のなかの一人、隆良もかっこばっかりつけて、オレはシューカツなんてものに流されない、とか言っちゃうし。
理香は名刺を作って精力的に企業のOB訪問、その必死さに周囲は引いてたり。

といやぁな要素をいろいろ書きましたけど、実は自分の中にもそういう暗部ってあるんですよね。
親戚の子が県外の知らない高校へ入ったと聞けば「(高校名) 偏差値」でググるよね、うん。
そういう自分の醜い行動を、白日の下に晒される感じがして、読んでて苦しかったのでしょう。

それとツイッターという存在。
私は(たぶん)ライトユーザーですが、それでも踊らされてる気持ちになることがあります。
だものそこに自分の存在意義を感じている若い人なんて、ツイートするための行動が生まれてしまうんじゃなかろーか。
リア充じゃないと! せめて週イチで外食した画像をUPしないと! とか。
そんな極端なヤツはいないか……でもうまく使わないと、この作品のように人間関係がぶっ壊れますね。
おー怖っ。


ミミズクとオリーブ

芦原すなお(東京創元社)

 不思議な能力を持つ小説家の妻。彼女は未解決の事件を、あらましを聞いただけで解決してしまう。
 うーん、これは感想を書きづらい。嫌いではないが、設定に無理があるように思える。時代背景は「現代」だが、主人公の夫婦だけが、明治時代の文豪夫婦していて、それがどうにも……。妻が暴くトリックも、古めかしい。
 それでもこの作品が醸し出す雰囲気、素直な優しい雰囲気は気に入った。
 妻は料理上手という設定で、これが本当に食指を動かされる。カマスを焼いて、すり潰して、ムギ味噌と合わせて、直火であぶる……日本酒を冷やでつけてくれぃ。
70点

鉄道員

浅田次郎(集英社)

 短編集。私は表題作より「うらぼんえ」が好き。
 嫁という立場で、四面楚歌で、艱難辛苦してるとき、じいちゃんが助太刀に来てくれる……あの世から。
 いくつになっても、たとえ死んでも、孫がかわいいというじいちゃんの慈愛に、敬服。
 その他の話も粒ぞろいで甲乙付け難く、泣かされた。
95点

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