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此処彼処

川上弘美(日本経済新聞社)

 いろいろな場所についてのエッセイ。
 一番興味を引かれたのが、公園デビューの話。と言ってもたまたま預かった親類の赤ちゃんを連れて公園へ行ったときの話である。
 ひとりで公園に行ったときには、話したこともなかった子連れママたち。でも赤ちゃん連れなら、あっという間にディープな話題まで提供してくれたという。
 川上氏は、そんなママたちを蔑むでもなく、ただただ不思議な光景として描いている。

 それから、自分の独創性のなさもあっさりと認めている。とっても普通で標準的。作家たるもの「他人とは違う自分」を演出しそうなものなのに……その潔さに驚かされた。
90点
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王国 その2 痛み、失われたものの影、そして魔法

よしもとばなな(新潮社)

 「王国 その1」の続編。
 都会でひとり暮らす雫石は、退屈で淋しくて、次第に気持ちがぼんやりしていく。お気に入りの商店街を発見したりして、少し元気を取り戻したり。そうかと思えば、TVにはまって罪悪感を持ってみたり。不安定な日々を送るのだった……。

 「その1」を読んだときに感じた透明感は「その2」では鳴りをひそめてしまった。代わりに説教くささが表面化してしまったようだ。
 精神的に苦しんでいる人が出すエネルギーは、実際に空気を汚す、などという表現は優しさがないように思えた。
 もちろん、良い部分もたくさんあった。楓が占いをする理由について、雫石が答えを見つけるシーンは悲しくもあたたかい。
70点

デッドエンドの思い出

よしもとばなな(文藝春秋社)

 短編集。
 五つの作品のなかで、私は「幽霊の家」が気に入った。
 ロールケーキの店を継ぐことになっている岩倉くんと、洋食屋を継ぐことになっているせっちゃん。
 同じ大学に通う二人は、ごく自然に惹かれあった。岩倉くんの住む安アパートには、老夫婦の幽霊が出るのだが、岩倉くんもせっちゃんも、幽霊がちっともこわくなかった。かえってその話題で和むほどだった……。

 海外へ修行に行っていた岩倉くんが帰国して、せっちゃんと再会するシーンが圧巻だった。時間が無限に広がってゆくイメージ、暖かい光に包まれるイメージが、美しく描写されている。少し宗教的なにおいがして、嫌悪感を抱きそうにもなるが、よしもと氏はその一歩手前でうまくかわしてくれている。

 その他、よしもと氏が自分の作品の中で、いちばん好きだと書いている「デッドエンドの思い出」は、ラスト三行がとても印象深かった。
90点

王国 その1 アンドロメダ・ハイツ

よしもとばなな(新潮社)

 山小屋でおばあちゃんと暮らしていた女の子「雫石」。おばあちゃんが海外で暮らすことになり、彼女はひとり都会へと出、占い師の「楓」と出会う。

 出だしは退屈だったが、次第に惹き込まれ、読了したときには満足感に包まれていた。
 小さな物語の積み重ねかたが素晴らしかった。居酒屋の「かけねなしに」優しい夫婦。占ってもらったお礼にと、チョコレートを差し出す少年。奥さんの明るさに疲れて別居している真一郎という男性。
 無駄がなくて、澄んでいて、心にすっと入ってくる表現がたくさんあって、ここにひとつひとつ引用したいくらいである。
 久々によしもと氏の世界を堪能した。
90点

ソロ

藤沢周(講談社)

 自分が殺した女の部屋にとどまる主人公。食事を作ってみたり、妄想に耽ってみたり。その行動には、どんな意味があるのか?無いのか?……無い。で私の感想は終わってしまいそうである。

 作者はタイトル通り「ソロ」(ひとり・単独)にこだわっているようだが、私のような凡人には理解不能である。
 主人公の視点でしか語られていないので、彼が何者なのか……単なる殺人鬼、人格破綻者……疑問は放り出されたまま。
 とにかく、とりあえず、わけわかりません。
15点

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