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パスタマシーンの幽霊

川上弘美(マガジンハウス)

 短編集。やはりこれを紹介せずにはいられない、『きんたま』。
 かなのひいおじいちゃんの使っていた火鉢。ひいおじいちゃんは、それを「きんたま火鉢」と呼んでいた。後年、ひいおじいちゃんが実は偉い学者だったと聞き、かなは心底驚く……。
 軽妙なひいおじいちゃんのエピソード、現在のかなの冴えない境遇、弁護士である姉に起きた悲しい事件……短編でありながら多彩なストーリー展開、でも欲張った感がなくてとても読みやすかった。

 その他の短編では、同じ話を違う登場人物の視点で描く、というのがいくつかあって、その手法も面白かった。人って、こうやって他人に誤解されながら弁解することも出来ず生きていくしかないんだなぁとしみじみ思ってしまった。
90点
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女子の生きざま

リリー・フランキー(新潮社)

 女子が幸せな人生を迎えるために、リリー先生が教え諭してくれる、ありがたいエッセイ。か?
 テレビで見るリリー氏の面白さを求めてこの本を読んだのだが、残念ながら期待は裏切られた。まるで別人のようにつまらない。
 ぼそりとつぶやく、切れ味のあるコメントが私は大好きなのだが、こうして本になってしまうと、ただの文句言いに思えてくる。
 ただ、笑える部分ももちろんあるので、それを探すようなつもりで読むと良いかもしれない。
30点

これでよろしくて?

川上弘美(中央公論新社)

 38歳の主婦、菜月は街中で昔付き合っていた彼氏の母親と、偶然再会する。彼女は「これでよろしくて? 同好会」に菜月を誘う。その会とは、日常のちょっと引っ掛かることについて、女性四、五人で忌憚なく意見交換をする、というものだった……。

 不思議な作品だった。本当に川上氏が書いたのだろうか? 俗っぽいというか、レベルが低いというか、種々納得できなかった。
 女性同士の飾らない会話、嫁姑問題、とくると誰が書いても薄っぺらい話になってしまうということか。
 まぁそれでもきらりと光る部分は、いくつかあったのだが。例を挙げるなら会員の一人がのたまった、
 「男の子はばかでかわいい。成績がどうの、という話ではなくて、ともかく息子っていうものはばかなのよ」という主旨のセリフ。
 私に息子はいないが、なんだか分かる気がした。計算していない素のかわいさが、男の子にはありそうだ。
60点

回想の太宰治

津島美知子(講談社)

 太宰治が自死するまでの十年間を妻として過ごした女性の随筆。
 非常に面白かった。太宰ファンには堪らない一冊である。

 まず、太宰が著した数々の作品に関するエピソードが大変興味深かった。『駆け込み訴え』は、炬燵にあたった太宰が「全文、蚕が糸を吐くように口述し、淀みもなく、言い直しもなかった」そうである。
 また、『人間失格』を執筆中には「『斜陽』の何倍もいいものだ」と、彼は気負って語ったという。
 この鳥肌の立つような逸話! 後に多くの人々を感動させる作品を生み出す現場を目の当たりにできた筆者に、嫉妬さえ覚えた。
 それから太宰の日常についての話も、愉快なものがたくさんあった。ノートに自分の顔を落書きしたり。高すぎる税金に狼狽し、「審査請求書」なるものを自分で書いたり。津軽で群がり咲くライラックの花を見せに「私」を畑まで連れ出したり。

 太宰を「矛盾のかたまりのような人」と評し、愛人と心中されてもなお、彼の言動を細部まで存分に表してくれた著者に感謝したい。
95点

彼女(たち)について私の知ってる二、三の事柄

金井美恵子(朝日新聞社)

 『小春日和』の続編。
 あれから10年経って30歳になった桃子。定職にもつかず、一人でのんびりと暮らし、その強靭さにはさらに磨きがかかったようだ。一方花子は勤めていた会社を辞めて、桃子と同じアパートに引越ししてきた。
 そして二人は……はて。
 と考えてしまうほど、ただ何となく過ぎ去ってゆく日々を描いているだけなのだが、それがいちいち面白いのである。こんな毒にも薬にもならないような話、面白がるのは何だか悔しいのだけれど。
 それから桃子の隣人の岡崎さんが、めっぽう俗っぽくて良い。アパートに一人はいそうな人物である。
80点

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