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よしなしごとども 書きつくるなり
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川上弘美(集英社)

 結婚して七年ののゆりは、夫である卓哉に愛人がいることを知る。卓哉は離婚をほのめかすが、のゆりにはその決心がつかない。ずるずると時だけが過ぎてゆくのだった……。

 のゆりというのは、どこか鈍くて、そのことに自身甘えているようなところがあって、でも本人はきっと「甘えてなんかいません。」と断言するであろう、そんな女性なのである。こういう主人公は読んでいてつらい。イライラする。
 極め付けは、卓哉にプライドはないのかと詰め寄られるシーンだ。そのあとののゆりの行動はまったく理解できないし、もっといえば気持ち悪い。
 終盤で、のゆりは唐突に離婚を決意する。が、それも「自分が離婚を切り出せば逆に卓哉は別れられないに違いない」と踏んでの行動のような気もする。天然ボケならぬ天然計算女……それがのゆりの正体だと思った。
 だが、そこはそれ川上作品、興味をそそるエピソードが巧みに盛り込まれ、主人公に嫌気が差しつつも最後まで読みきることができた。
75点
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太宰治(新潮社)

 九つの短編が収められている。
 太宰が大学生となって上京してからの十年間を描いた『東京八景』。彼の苦しい心境が、抑えた筆致で切々と描かれている。
 その場かぎりの嘘を付く自分、せっぱつまって死ぬことを考える自分。「自ら虚偽の地獄を深めている」と彼は告白する。
 彼の才能を知っている読者は(あるいは私は)、彼が絶望してのたうち回っているさまを読むと、本当に胸が痛む。逆に彼が生きる決心をし、「懸命に書いた」とあれば、心底安堵する。
 彼の波打つ感情に共鳴し、周囲の雑音もすっぽりと抜け落ちた中で、彼の作品をむさぼり読む快感を、久しぶりに味わった。

 他に『駆込み訴え』『走れメロス』など、何度読んでも感動できる作品が収録されている。
90点
朝の読書推進協議会 編(メディアパル)

 本との出会いのすばらしさを、作家が紹介している。
 宮部みゆき氏の部分が読みたくて買ってみたのだが、ほかにも鈴木光司氏、島田荘司氏、田辺聖子氏など、そうそうたるメンバーが執筆されている。

 特に心に残ったのは「空想科学読本」の著者である柳田理科雄氏の話。
 「読書は、スポーツや恋のようなものだ。やったから偉いわけでもなく、やらなくても困りはしない。が、経験してみれば、その人にしか味わえない喜びを見つけられる」。
 この喜びを味わおうともしない人が、世の中にはたくさんいる。私は読書を勧めはしないが(やっぱりつまらない、と文句を言われるのがオチだから)、本なしではいられない私のような人間からしたら、信じられないことである。
55点
太宰治(新潮社)

 津軽を旅した太宰の紀行文。
 郷土の歴史についての記述は冗長で退屈だったが、友人、知人との再会の描写などは、いかにも楽しげに生き生きと書かれていた。
 彼があちこちで酒に執着する様子なども、茶目っ気たっぷりに描かれており、その一喜一憂ぶりに苦笑してしまった。

 そして、この作品の主題は、なんといっても彼の育ての親「たけ」との再会であろう。その部分を書きたいが為に、彼はこの作品を書いたのではないかと思わせるくらい、再会のシーンが素晴らしかった。
 ぎこちなく喜びを表現する「たけ」、心から寛いで、母親の無心の愛もかくや、と思いを馳せる太宰。二人のやり取りには、肉親同士に勝るとも劣らない優しさが溢れていた。
75点
川上弘美(平凡社)

 エッセイ集。「卵一個ぶんのお祝い。」の続編。
 やっぱり、いちいち、隅ずみまで面白い。いくらでもこの日記を続けてライフワークとして欲しい、ほどである。

 本屋さんでじっくり本のタイトルを眺めていたら、目の前がぐらぐらしてきた、本の背表紙に酔ったらしい、とか。
 電車の中で桜餅の匂いがした、さらに水たまりの匂いもした、春先はときどき、こういう「匂う日」がある、とか。
 あぁ、あるある、と思わず頷いてしまうことがたくさん書かれていて、うれしくて、私も踊りだしたくなってしまった。というのは嘘だけど。
100点
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