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よしなしごとども 書きつくるなり
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川上弘美(中央公論新社)

 38歳の主婦、菜月は街中で昔付き合っていた彼氏の母親と、偶然再会する。彼女は「これでよろしくて? 同好会」に菜月を誘う。その会とは、日常のちょっと引っ掛かることについて、女性四、五人で忌憚なく意見交換をする、というものだった……。

 不思議な作品だった。本当に川上氏が書いたのだろうか? 俗っぽいというか、レベルが低いというか、種々納得できなかった。
 女性同士の飾らない会話、嫁姑問題、とくると誰が書いても薄っぺらい話になってしまうということか。
 まぁそれでもきらりと光る部分は、いくつかあったのだが。例を挙げるなら会員の一人がのたまった、
 「男の子はばかでかわいい。成績がどうの、という話ではなくて、ともかく息子っていうものはばかなのよ」という主旨のセリフ。
 私に息子はいないが、なんだか分かる気がした。計算していない素のかわいさが、男の子にはありそうだ。
60点
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津島美知子(講談社)

 太宰治が自死するまでの十年間を妻として過ごした女性の随筆。
 非常に面白かった。太宰ファンには堪らない一冊である。

 まず、太宰が著した数々の作品に関するエピソードが大変興味深かった。『駆け込み訴え』は、炬燵にあたった太宰が「全文、蚕が糸を吐くように口述し、淀みもなく、言い直しもなかった」そうである。
 また、『人間失格』を執筆中には「『斜陽』の何倍もいいものだ」と、彼は気負って語ったという。
 この鳥肌の立つような逸話! 後に多くの人々を感動させる作品を生み出す現場を目の当たりにできた筆者に、嫉妬さえ覚えた。
 それから太宰の日常についての話も、愉快なものがたくさんあった。ノートに自分の顔を落書きしたり。高すぎる税金に狼狽し、「審査請求書」なるものを自分で書いたり。津軽で群がり咲くライラックの花を見せに「私」を畑まで連れ出したり。

 太宰を「矛盾のかたまりのような人」と評し、愛人と心中されてもなお、彼の言動を細部まで存分に表してくれた著者に感謝したい。
95点
金井美恵子(朝日新聞社)

 『小春日和』の続編。
 あれから10年経って30歳になった桃子。定職にもつかず、一人でのんびりと暮らし、その強靭さにはさらに磨きがかかったようだ。一方花子は勤めていた会社を辞めて、桃子と同じアパートに引越ししてきた。
 そして二人は……はて。
 と考えてしまうほど、ただ何となく過ぎ去ってゆく日々を描いているだけなのだが、それがいちいち面白いのである。こんな毒にも薬にもならないような話、面白がるのは何だか悔しいのだけれど。
 それから桃子の隣人の岡崎さんが、めっぽう俗っぽくて良い。アパートに一人はいそうな人物である。
80点
連城三紀彦(双葉社)

 埼玉県のとある街で、一人の幼女が誘拐される。
 被害者の家には、犯人によって事前に盗聴器が仕掛けられていた。言動を見張られる格好になった被害者の母親は、次第に追い詰められてゆく。大雪が降りしきるなか、警察の捜査もまた膠着状態が続き……。

 期待したほどではなかった、というのが正直な感想である。
 まずタイトルに絡めたストーリーの進め方が邪魔くさい。仕草や目つきを動物になぞらえて言う部分が多すぎではないだろうか。
 それから随所に散見される、妙に文学的な表現が鬱陶しい。被害者の母親が、盗聴器のことを「象牙色に青ざめながらもぴくぴく動く」と表現するところなど、興ざめしてしまった。
50点
連城三紀彦

 実はこの小説は読売新聞の朝刊に連載していた小説なのである。で、先日連載が終了したので居てもたってもいられずUPした。毎日愉しませてもらったのできれいな装丁の本になることを陰ながら願っております。

 娘の婚約者に惹かれて、一度だけ一線を越えてしまう母が主人公。彼女には立派な(社会的には)夫がいるのだが、何でも型にはめたがり、自分を所有物のようにしか考えてない彼に嫌気がさして、離婚覚悟の行動をとる、そして……。
 いざというとき、肝の据わった行動をとるのは存外女性かもしれない。そんなとき男性は……見苦しくうろたえるのが一番良くないと思った。
75点
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