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怪奇探偵小説傑作選3 久生十蘭集

久生十蘭(筑摩書房)

 十蘭の魅力を存分に味わえる14の作品が収められた一冊。
 私が気に入ったのは『予言』。
 画家である安部は、ふとした誤解が元で石黒という男の恨みをかう。その石黒が、ある予言をした。安部は将来、拳銃自殺をするというのである。
 はじめは一笑に付していた安部だが、予言がことごとく的中してゆくにつれ、絶体絶命の境地に陥ってゆく……。

 いかなる深刻なシーンでも、一種の「軽さ」が失われることがない。安部の飄々とした性格のなせる業でもあろうが、筆者自身が、憂愁に閉ざされることを厭う気配がうかがわれる。
 また、細部にまで神経が行き届いた表現が使われていて、初冬の夕暮れの描写、セザンヌの絵画についての描写など、ぞくぞくするほど素晴らしかった。
85点
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肌色の月

久生十蘭(中央公論社)

 代々ガン死する家系に生まれた久美子。彼女はある日見上げた月が肌色に見えたことから、自分の死期を悟り、自殺するために旅立つが、そこで奇妙な事件にまきこまれてゆく。

 この作品集(中公文庫版)の白眉は、筆者の夫人が書かれた「あとがき」である。夫人は筆者が志半ばで逝ってしまったあと、作品の続きを書き上げ、その闘病の様子を「あとがき」に記している。最後まで書くことに執念を燃やす筆者、支えようとする夫人。初めて「あとがき」で泣いた。
 作品自体は、推理小説としては甘い筋立てであるが、どこか茶目っ気のある文章で、楽しんで読むことができた。
80点

ツ、イ、ラ、ク

姫野カオルコ(角川書店)

 とある田舎町の小学校。2年2組の少女たちは、泣いたり笑ったり、嫉妬したり妄想したりしながら成長していた。
 やがて彼女たちは中学生になり、恋を知り、性欲を知る。特に精神的に早熟だった準子は、河村という教師に興味を持つようになり……。

 子供たちは「こんな子、確かにクラスにいた!」と思わせるリアルさを持っていた。暴君な女ボス・統子。一人が好きな準子。なんでもそつなくこなす太田君。キザな転校生の佐々木君。小学生時代の自分はどの子かな? と思わず夢想するほどだった。
 ただ中学以降のストーリーは、過激すぎて面食らってしまった。準子の一連の事件もそうだが、美しい小山内先生の美しくない過去は、不気味ささえ感じてしまった。
75点

よるねこ

姫野カオルコ(集英社)

 ホラー短編集。
 『ほんとうの話』が面白かった。
 幼いころから霊感が強かった「私」。級友が事故で亡くなったとき、お手伝いのおばあさんが亡くなったとき、「私」は彼らの声を聞いた。
 ただ不惑の歳を迎えようとしている今は、その霊感もだいぶ薄まったように感じていた。が、あるとき、帰省中の「私」は不思議な光景を目にする……。

 いわゆる「よくある話」なのだが、「私」の心情が細部まで丹念に書き込まれているせいか、かなり恐怖感をあおられた。特にラストの学校のシーンは怖かった。
 その他『女優』も良かった。最後の二行にはかなり驚かされた。
75点

永遠の0

百田尚樹(講談社)

 第二次世界大戦で特攻隊員として死んだ祖父。孫の健太郎は、フリーライターをしている姉に頼まれ、祖父の生涯を追うことになる。戦友たちが語る祖父の人物像とは……。

 いわゆる戦争モノと言われる本をわずかばかり読んだことはあったが、どれもこれも陰惨で、もうこの手の本は読むまいと思わせるものばかりだった。が、この作品を読んで意識が変わった。戦争モノ、素晴らしいじゃない!

 健太郎の祖父・宮部は、志願兵でありながら死ぬことを極度に恐れていたため、周囲からは臆病者と蔑まれていた。しかし抜群の飛行技術を持ち、部下にも優しく接し、いつも紳士然としていたため、慕う人間も多かった。
 彼は妻子のために絶対生きて帰ると心に誓っていた。それを態度に表すことこそ、当時は勇気が要ることだったのだ。そんな彼が、なぜカミカゼとなったのか?
 そのわけが明らかとなったとき、本当に涙が止まらなかった。彼の男気に心底感動した。
 他に、零戦の性能のこと、軍の上層部の無能ぶり、真珠湾攻撃の真実等々、まったく興味も知識も無かった事柄について知ることができ(どこまでノンフィクションなのか不明だが)、その意味でも優れた作品であった。
95点

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