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よしなしごとども 書きつくるなり
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遠藤周作(新潮社)

 切支丹が激しく弾圧されていた時代、遠くポルトガルから、命からがら日本へとやってきた司祭、ロドリゴ。彼もやがては囚われの身となってしまう。最後の瞬間、彼は踏み絵を踏むのか否か。

 宗教についてここまで考えさせられたことは、未だかつてなかったように思う。
 棄教を迫られ、自らの命が危険に晒されても信仰を捨てない信徒たち。だがどんなに苦しんでも悲しんでも神は「沈黙」しているのである。それはなぜか。
 神とはひたすら「感謝」を捧げるためだけの存在なのか。それ以前に、存在として捉えていいのか。
 無宗教の私には重すぎるテーマではあった。だが心を打つ素晴らしい作品であったことは間違いない。
90点
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熊谷達也(新潮社)

 七つの短編が収められている。『鈍色の卵たち』が良かった。
 集団就職をした教え子・聡に会うため、教師である貴子は東京へと赴く。聡は優秀で大人びた生徒だった。貴子は彼の才能を買って、働きながら夜間高校に進むよう指導したのだったが……。

 聡が書いた詩をとおして貴子が彼に惹かれてゆく部分がとても鮮烈だった。彼の感性が、才気が、彼女の心を揺さぶって淡い恋心を芽生えさせる。そこからラストまで、貴子の愛情や逡巡が細やかに描かれていて、容易に彼女に感情移入することができた。
70点
遠藤周作(新潮社)

 通商を始めるためにノベスパニヤ(メキシコ)に使者が派遣されることになる。格式ひくい武士である「侍」のほか、幾人かの使者衆、通訳兼宣教師のベラスコが同行する。
 行く先々で苦難に遭遇し、ぼろぼろになった彼らが最後に見たものは、一体何だったのか。

 侍・長谷倉の絶望もいかばかりだったかと思うが、宣教師ベラスコのそれのほうに心を捉えられた。日本という国にキリスト教を布教するという彼の望みは、ことごとく退けられ、ついえた。だが、絶望してしかるべき彼は思う。これが地上の現実だ、と。汚くて悲惨なこの地上に生きたことこそが、意味のあることだったのだ、と。
 宣教師たちの目から見た日本という国が、あまりにかたくなで無慈悲で、本当に読むのがつらかった。
90点
熊谷達也(文藝春秋社)

 秋田県のとある寒村育ちの富治。
 彼は、熊やカモシカを獲って生活する「マタギ」として、充実した日々を過ごしていた。だが、ある事件がきっかけで、村を追われる身となった彼は、マタギをやめて鉱夫として働かざるを得なくなる……。

 狩猟なんてほとんど興味がないし、汗臭いだけの男たちの話だったらどうしようと危惧したが、そんな心配は無用だった。
 息詰まるような熊との死闘。突然牙を剥く大自然の恐怖。富治を中心として描かれる、友情と恋愛。それらが次から次へと活写されていて、まったく飽きさせない。
 ただ、性描写があまりにも生々しく、ふつうは楽しんで読んでしまう(!)私でさえ、ちょっと引いた。
85点
倉橋由美子(講談社)

 「慧」くんはふらりととあるクラブを訪れては、バーテンダーの九鬼さんに怪しげなカクテルを作ってもらい、異界へと旅立つ・・・連作小説集。

 タイトルの「よもつひらさか」は「黄泉平坂」で、古事記に出てくる現世と黄泉の国の境となる坂のことだそうだ。
 なるほど、慧くんの身に起こることは妖しく、幻想的である。不気味な描写もあるが、不快には感じなかった。
 ただ、五言絶句やらギリシャ神話やらが当たり前のように会話に登場し、学の無い私は置いてきぼりをくらったような気になった。
70点
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