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ミンケパットさんと小鳥たち

ウルスラ・ジェナジーノ、ヨゼフ・ウィルコン(セーラー出版)




 一人暮らしのミンケパットさん。
 彼は小鳥のさえずるメロディにあわせて、古いピアノをいつも弾いていた。
 近所の人々はそれを迷惑がったが、小鳥たちはいつしか彼の家に集まるようになり……。

 気難しそうなミンケパットさん。
 笑顔の絵はひとつもないのだが、小鳥たちといっしょに描かれた彼は、とても優しそうに見える。

 色味を抑えた渋い挿絵も良いのだが、ストーリーもまた良い。
 孤独な老人にも春は訪れる。
 そのシンプルさが良い。

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冥途

内田百閒(パロル舎)




 短編集。六つの作品が収められている。

 『件(くだん)』がよかった。
 からだが牛で顔だけ人間の「件」になってしまった「私」。
 「件」は何らかの予言をするというが「私」は何を予言したらいいのか分からない。
 人々が集まってきて途方に暮れる「私」。

 百閒の謎めいた文章もすばらしいが、版画がまた良い。
 おどろおどろしく、それでいてどことなく滑稽。
 「件」のラストの絵がカバーにも描かれているが、物語のラストのおかしみをうまく表現していると思う。

めぐる月日に

エリック・バトゥー、谷内こうた(講談社)




 1月から12月まで、自然の中で生きる動物たちの想いを描いた一冊。

 どの絵も、広々とした場所があって、そこに動物がちょこんと描かれている。
 動物たちはみなユーモラスで可愛い。

 「1月、まっている……」で始まる月々の短い言葉も、絵の邪魔になることなく良い味を出している。

 それにしても11月は、もうさむい……って。
 私の生まれ月は、作家でさえしゃれたことが言えない月なのか?

やまなし

宮澤賢治(パロル舎)




 蟹の兄弟が、青い水の底で見た世界。
 色がすばらしい。
 五月の、光差す水の中は青磁色
 十二月のつめたい水は紺青色
 そして物語が綴られた文字の背景色は青鈍(あおにび)
 うっとりするような色使いである。

 もちろん、宮澤賢治の独特のストーリーもまた良い。
 兄弟のちょっとした諍いは微笑ましく、途中で登場する父親は、凛々しくててすてきだ。

 それから擬音の使い方がすごい。
 「……その上には月光の虹がもかもか集まりました」
 なんて、一体誰がこんな擬音を思いつくだろう。

郵便屋さんの話

カレル・チャペック、藤本将(フェリシモ)




 郵便屋さんのコルババは、あるとき宛名も差出人も書かれていない手紙を見つける。
 妖精に聞いたら、その手紙はプロポーズの手紙だというので、彼は受取人である娘を探しに旅に出る。

 ストーリーが愉快だった。
 妖精などという可愛らしいものを登場させたと思ったら、彼らに「人間がこぼしたパンくずをゴキブリのように食べる」と言わせたり。
 コルババが差出人を見付けたと思ったら、彼をけちょんけちょんに貶したり。

 藤本将氏の絵もノスタルジックな雰囲気でストーリーに合っている。

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