コーマック・マッカーシー(早川書房)
舞台は(おそらく)核戦争後の地球。廃墟のなか、父と息子は南を目指して旅をする。カートに必要最小限のものを詰めて。生物はほとんどいないが、生き残りの人間同士が出会うと死闘は必至だった。そこでは人肉も貴重な食料だったから……。
確かなあてもなく、ただ父と息子が歩いていく話。こう書くと退屈そうだが、どっこい手に汗握るストーリーで最後まで飽きるということがなかった。
まず息子の善良さに心を打たれた。ときには非道を働こうとする父を、彼はあふれる涙で抑止する。荒みきった世界にあって、彼の純粋さはひときわ際立つ。
それから父と息子の静かなやりとりが良い。
……ぼくたちは今でも善い者なの? ああ。今でも善い者だ。 これからもずっとそうだよね。 そう。これからもずっとそうだ。 わかった。
短い文に込められている、二人のたくさんの想いと願い。どうぞそれらを踏みにじらないでと、この物語の世界には存在しない、するわけがない神にすがりたくなるほどだった。
90点
舞台は(おそらく)核戦争後の地球。廃墟のなか、父と息子は南を目指して旅をする。カートに必要最小限のものを詰めて。生物はほとんどいないが、生き残りの人間同士が出会うと死闘は必至だった。そこでは人肉も貴重な食料だったから……。
確かなあてもなく、ただ父と息子が歩いていく話。こう書くと退屈そうだが、どっこい手に汗握るストーリーで最後まで飽きるということがなかった。
まず息子の善良さに心を打たれた。ときには非道を働こうとする父を、彼はあふれる涙で抑止する。荒みきった世界にあって、彼の純粋さはひときわ際立つ。
それから父と息子の静かなやりとりが良い。
……ぼくたちは今でも善い者なの? ああ。今でも善い者だ。 これからもずっとそうだよね。 そう。これからもずっとそうだ。 わかった。
短い文に込められている、二人のたくさんの想いと願い。どうぞそれらを踏みにじらないでと、この物語の世界には存在しない、するわけがない神にすがりたくなるほどだった。
90点
PR
この記事にコメントする