忍者ブログ
ADMINWRITE
よしなしごとども 書きつくるなり
[2570]  [2569]  [2568]  [2567]  [2565]  [2564]  [2563]  [2562]  [2561]  [2560]  [2559
吉村昭(中央公論新社)

16の短編が収められている。
「法師蝉」が特に面白かった。
学生時代の同期会に出席したあと、同級生のひとりが亡くなったという一報を受け取った星野。
その死を想ううちに、彼は様々な事柄を思い出す。少年時代、庭で羽化する蝉を見つめたこと。若い頃に肺結核に罹り、病床で絶望を味わったこと。
妻に訃報を伝え、彼女との若かりし頃の出来事にも思いをはせる星野であったが……。

同じようなモチーフを扱った短編がいくつか収められていたが、たとえば肺結核の話は何度も出てきたが、どれも新鮮な気持ちで読めた。
卵は一緒でも目玉焼きあり、厚焼きあり、オムレツありで、料理次第でどうとでもなる、という見本のような短編集だった。
その味付けが素晴らしく、「法師蝉」の中で蝉の羽化を描いたシーンは特に秀逸だった。
蝉の殻の背が割れて……「停止しているかと思うほど動きはかすかだが、チューブから押し出される透明な軟膏のように体が上方にのびてゆき、」……ぞくぞくした。

こういう作家は令和でも現れるのだろうか。
淡々と描写しているようで、深々と人を物事をえぐっていく。
昭和という時代があったからこそ成せる業だったような気もする。

100点

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
カレンダー
01 2025/02 03
S M T W T F S
2 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28
カテゴリー
フリーエリア
最新コメント
[01/30 まきまき]
[01/30 もか]
[01/23 まきまき]
[01/23 ぴーの]
[01/16 まきまき]
プロフィール
HN:
まきまき
性別:
女性
バーコード
ブログ内検索
P R
カウンター
アクセス解析

Designed by 湯月   Material by ウタノツバサ
Copyright c [ Back To The Past ] All Rights Reserved.

忍者ブログ [PR]