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JR上野駅公園口

柳美里(河出書房新社)

昭和8年生まれの「私」は福島の海辺やときには北海道まで出稼ぎに行っていた。そして東京五輪の前年である昭和38年に、妻や子どもを残して東京へ出稼ぎに行く。活気あふれる東京、男は懸命に働くが……。

実母と同じ年生まれの主人公が必死に生きようとする姿に心うたれた。
ただ実直に生きているだけなのに貧しさから抜け出せず、家族にも次々に不幸が降りかかる。自身もやがて上野でホームレスとなる。
この作品を読むと、ホームレスが特殊な人だとは思えなくなる。コロナ禍の今は特に気付けばホームレス、という人がたくさんいそうである。

物語の根底には天皇制とは何なのか? という問いもある。
天皇家の誰かが上野周辺の施設へ来るとき、ホームレスたちは小屋を畳んで立ち退かなければならない。それは「山狩り」と呼ばれ、雨だろうが真冬だろうが貼り紙ひとつで彼らは排除される。
これは皇族かホームレスのどちらかが悪いのか? その答えは書かれていない。
同じ時代に同じ国に生まれても、人々の人生には天と地ほどの差が生まれ得る、という当たり前の事実に震えるばかりである。
80点

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