柳美里(角川書店)
後味悪し。ディティールが……石鹸にへばりつくナメクジとか、ミスすると脇腹をつねるピアノ教師とか、枚挙にいとまがない。ぴか一は友人の父親に性的いたずらをされるシーン。私も自慢できるような家庭で育たなかったので、こういう大人達のどす黒い醜さを目にしてしまったクチである。だから読んでいて胸がムカムカした。
子供だと思ってなめんなよ、理解できないフリしててやるけどさ……子供にそんなふうに思わせる大人は最低である。
75点
後味悪し。ディティールが……石鹸にへばりつくナメクジとか、ミスすると脇腹をつねるピアノ教師とか、枚挙にいとまがない。ぴか一は友人の父親に性的いたずらをされるシーン。私も自慢できるような家庭で育たなかったので、こういう大人達のどす黒い醜さを目にしてしまったクチである。だから読んでいて胸がムカムカした。
子供だと思ってなめんなよ、理解できないフリしててやるけどさ……子供にそんなふうに思わせる大人は最低である。
75点
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夢枕獏(文藝春秋社)
ううむ、おれは京極夏彦のあやかしの話をほつほつと思い出したぞ……陰陽師(おんみょうじ)ふうに言うとこうなるか。
時代小説はほとんど読まないのだが、この本を読んだら、こういうみやびな世界にも興味をそそられた。
嫋(じょう)と鳴る琵琶の音、ふうわりと身に纏った狩衣(かりぎぬ)。加えて主人公の陽陰師安倍清明は長身で色白、目元は涼しく秀麗な顔。あぁもっと読みたい。ハマってしまいそうな自分がこわい。
80点
ううむ、おれは京極夏彦のあやかしの話をほつほつと思い出したぞ……陰陽師(おんみょうじ)ふうに言うとこうなるか。
時代小説はほとんど読まないのだが、この本を読んだら、こういうみやびな世界にも興味をそそられた。
嫋(じょう)と鳴る琵琶の音、ふうわりと身に纏った狩衣(かりぎぬ)。加えて主人公の陽陰師安倍清明は長身で色白、目元は涼しく秀麗な顔。あぁもっと読みたい。ハマってしまいそうな自分がこわい。
80点
横山秀夫(集英社)
短編集。
表題作の『第三の時効』が良かった。
15年前に起きた暴行殺人事件が時効を迎えようとしていた。が、犯人が海外に渡航した事実があり、その日数の7日間時効は延長された。刑事たちは犯人の誤認に期待して彼からの連絡を待つが……。
事件の真相の意外性もさることながら、刑事たちの本音のぶつかりあいが読ませる。冷血漢の楠見と情にほだされる森。二人の対比が鮮烈な印象を残した。
他に『密室の抜け穴』も良かった。犯人逮捕のシーンは緊迫感があり、胸が高鳴った。
90点
短編集。
表題作の『第三の時効』が良かった。
15年前に起きた暴行殺人事件が時効を迎えようとしていた。が、犯人が海外に渡航した事実があり、その日数の7日間時効は延長された。刑事たちは犯人の誤認に期待して彼からの連絡を待つが……。
事件の真相の意外性もさることながら、刑事たちの本音のぶつかりあいが読ませる。冷血漢の楠見と情にほだされる森。二人の対比が鮮烈な印象を残した。
他に『密室の抜け穴』も良かった。犯人逮捕のシーンは緊迫感があり、胸が高鳴った。
90点
横山秀夫(文藝春秋社)
85年、日航機墜落事故が起きる。群馬県の地方紙記者、悠木は全権デスクに任命される。
未曾有の大事故に翻弄される社内。醜い派閥争い、利害の絡み合いに、悠木の神経は磨り減ってゆく。
彼の気がかりはもう一つあった。共に谷川岳を登る約束だった友人、安西の安否である。倒れて病院に運ばれたという彼の身に何が起きたのか……。
新聞を手にしたとき「今日は日航機のどんなニュースが載ってるかな?」と思ってしまうほど、この小説はリアルで迫力があった。
まず新聞社の内情という、今まであまり知らなかった世界を、筆者は鮮やかに描き出してくれた。報道という崇高な使命を帯びているはずの男たちの泥仕合には、何度も呆然とさせられた。
そして同時進行する「17年後の悠木」もまた読ませる。
安西と行くはずだった衝立岩に、彼の息子と二人で挑戦する悠木。そこで彼が見たものに私の気持ちも激しく揺さぶられ、涙を止めることができなかった。
100点
85年、日航機墜落事故が起きる。群馬県の地方紙記者、悠木は全権デスクに任命される。
未曾有の大事故に翻弄される社内。醜い派閥争い、利害の絡み合いに、悠木の神経は磨り減ってゆく。
彼の気がかりはもう一つあった。共に谷川岳を登る約束だった友人、安西の安否である。倒れて病院に運ばれたという彼の身に何が起きたのか……。
新聞を手にしたとき「今日は日航機のどんなニュースが載ってるかな?」と思ってしまうほど、この小説はリアルで迫力があった。
まず新聞社の内情という、今まであまり知らなかった世界を、筆者は鮮やかに描き出してくれた。報道という崇高な使命を帯びているはずの男たちの泥仕合には、何度も呆然とさせられた。
そして同時進行する「17年後の悠木」もまた読ませる。
安西と行くはずだった衝立岩に、彼の息子と二人で挑戦する悠木。そこで彼が見たものに私の気持ちも激しく揺さぶられ、涙を止めることができなかった。
100点
横山秀夫(文藝春秋社)
短編集。
表題作の「動機」より「逆転の夏」が良かった。
殺人罪の刑期を終えて社会復帰した山本は、見知らぬ男から殺人を依頼される。初めは聞き流していたが、相手の男が勝手に銀行口座に金を振り込んできて、彼は次第に迷いだす。成功報酬は五千万円。彼は求めに応じるのか。
前科のある人間の不安や焦燥、憤りがとても分かりやすく描かれている。終盤のどんでん返しも効いているし、救いのあるラストも良い。
80点
短編集。
表題作の「動機」より「逆転の夏」が良かった。
殺人罪の刑期を終えて社会復帰した山本は、見知らぬ男から殺人を依頼される。初めは聞き流していたが、相手の男が勝手に銀行口座に金を振り込んできて、彼は次第に迷いだす。成功報酬は五千万円。彼は求めに応じるのか。
前科のある人間の不安や焦燥、憤りがとても分かりやすく描かれている。終盤のどんでん返しも効いているし、救いのあるラストも良い。
80点