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走れメロス

太宰治(新潮社)

 九つの短編が収められている。
 太宰が大学生となって上京してからの十年間を描いた『東京八景』。彼の苦しい心境が、抑えた筆致で切々と描かれている。
 その場かぎりの嘘を付く自分、せっぱつまって死ぬことを考える自分。「自ら虚偽の地獄を深めている」と彼は告白する。
 彼の才能を知っている読者は(あるいは私は)、彼が絶望してのたうち回っているさまを読むと、本当に胸が痛む。逆に彼が生きる決心をし、「懸命に書いた」とあれば、心底安堵する。
 彼の波打つ感情に共鳴し、周囲の雑音もすっぽりと抜け落ちた中で、彼の作品をむさぼり読む快感を、久しぶりに味わった。

 他に『駆込み訴え』『走れメロス』など、何度読んでも感動できる作品が収録されている。
90点
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