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よしなしごとども 書きつくるなり
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川上弘美(日本経済新聞出版社)

 同じ年、同じ日に生まれた留津とルツ。
 人生の数々の岐路で、道は果てしなく分かれてゆく。どんな学校か、就職先か、結婚相手は? はたまた独身なら?
 1966年から60年にわたる物語。

 2人の「るつ」が交互に語り手となって進む話は、やがて琉都、流津、瑠通、と広がりを見せる。まるで葉脈のように、分岐が分岐を呼ぶ。
 けれどとっ散らかった印象はなく、常に引きで物事を眺めているようなるつの性格ゆえか、粛々と時間は流れていく。

 周囲の人たち……自分の親、義理の親、友だち、恋人、同僚……との関わりを描いている部分はもちろん、東日本大震災のときの出来事がとても鮮やかに生々しく描かれていた。選び取った道でもそうでなくても、結局なるようにしかならない、そんな諦観がほの見えた。

 そしてこの作品の助演女優賞は、姑のタキ乃であろう。浪費家で息子に倹約生活を強いても何とも思わない強烈な性格。自分は絶対悪くないと信じて疑わない人、いるよねぇ。
95点

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