川上弘美(講談社)
エッセイ集。
今回初めて川上氏の「老い」を感じた。具体的にどこが? を書くのは難しいのだが、今までのエッセイと比べると淡泊というか、肩ひじ張らなさ度が増したようだ。
面白さも少しだけ減ったような、いや減ったは失礼だな、軽めになった、かもしれない。
『ぬか床のごきげん』の章が良かった。
そのなかのひとつ『厳然たる』。
1月の最初のごみ収集について。大量に捨てられたゴミに圧倒される川上氏。続いてコンビニエンスストアで湯気を立てている肉まんを見る川上氏。同じ瞬間、湯気を立てている無数の肉まんに思いを馳せたり。それでふと恐怖にかられてみたり……みんながしあわせであるためのしくみは、こわい、という一文に、感じ入った。
同じ時を共有している無数の人々がいる、そのあやうい感じが私もこわい。
1月の最初のごみ収集について。大量に捨てられたゴミに圧倒される川上氏。続いてコンビニエンスストアで湯気を立てている肉まんを見る川上氏。同じ瞬間、湯気を立てている無数の肉まんに思いを馳せたり。それでふと恐怖にかられてみたり……みんながしあわせであるためのしくみは、こわい、という一文に、感じ入った。
同じ時を共有している無数の人々がいる、そのあやうい感じが私もこわい。
85点
ワタシの一行
「男の子が脱ぎすてたそれ(セーター)を、はだかの肩にふわっとかけて、ちくちくするー、なんて可愛らしく言ってみた頃も、あったわけだ。」(単行本 P.33)
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