Back To The Past
よしなしごとども 書きつくるなり
ブラフマンの埋葬
小川洋子(講談社)
芸術家が集まる<創作者の家>で、管理人を務める「僕」。彼の元に、ある日怪我をした動物がやって来る。ブラフマンという名前をつけ、彼は動物と一緒に暮らし始める。いらずらっ子のブラフマンに彼は愛情を注ぐが……。
主人公は決して激昂したりせず、いつも淡々と事実だけを述べる。それがときにこの上なく嫌味に聞こえるから不思議だ。
レース編み作家にブラフマンの存在を気付かれたときの描写など、彼の「何が悪いんだ」という意識が見え隠れして、結構うんざりさせられた。
また、彼にはひそかに想いを寄せる娘がいた。その接し方は、彼女が自己嫌悪に陥るように仕向けているようにも思え、ひどく女々しく感じられた。
私の期待が大きすぎたのかもしれないが、この作品は退屈だった。
60点
芸術家が集まる<創作者の家>で、管理人を務める「僕」。彼の元に、ある日怪我をした動物がやって来る。ブラフマンという名前をつけ、彼は動物と一緒に暮らし始める。いらずらっ子のブラフマンに彼は愛情を注ぐが……。
主人公は決して激昂したりせず、いつも淡々と事実だけを述べる。それがときにこの上なく嫌味に聞こえるから不思議だ。
レース編み作家にブラフマンの存在を気付かれたときの描写など、彼の「何が悪いんだ」という意識が見え隠れして、結構うんざりさせられた。
また、彼にはひそかに想いを寄せる娘がいた。その接し方は、彼女が自己嫌悪に陥るように仕向けているようにも思え、ひどく女々しく感じられた。
私の期待が大きすぎたのかもしれないが、この作品は退屈だった。
60点
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ゆっくりさよならをとなえる
川上弘美(新潮社)
エッセイ集。
「あるようなないような」もかなり楽しめたが、このエッセイもまた、非常に面白かった。
今回は、川上氏と私の共通点が判明した『わからないことなど』が、特に興味深かった。 「体が大きい。大女なのである。」で始まるこのエッセイ、あぁ分かる分かる、と貪り読んでしまった。標準から外れているという、ちょっと切なくてもやもやした感情を、うまく表現してくれている。
さらに、随所に川上氏の読まれた本の感想が書かれている。それがまたとてつもなく面白そうだから困ってしまう。
イタロ・カルヴィーノ「柔らかい月」、久世光彦「桃」あたりはいつか必ず読むぞ、と心に決めた。
95点
エッセイ集。
「あるようなないような」もかなり楽しめたが、このエッセイもまた、非常に面白かった。
今回は、川上氏と私の共通点が判明した『わからないことなど』が、特に興味深かった。 「体が大きい。大女なのである。」で始まるこのエッセイ、あぁ分かる分かる、と貪り読んでしまった。標準から外れているという、ちょっと切なくてもやもやした感情を、うまく表現してくれている。
さらに、随所に川上氏の読まれた本の感想が書かれている。それがまたとてつもなく面白そうだから困ってしまう。
イタロ・カルヴィーノ「柔らかい月」、久世光彦「桃」あたりはいつか必ず読むぞ、と心に決めた。
95点
もの食う人びと
辺見庸(角川書店)
私「今地球上に人間ってどれくらいいるの?10億くらい?」
ダンナ「はあぁ?中国だけでも10億以上いるよ。全部で60億くらいじゃない」
そんなにいる中で、毎日充分な食事が摂れているのは……八割くらい? もっと少ない? 切なくなってくる。
筆者は世界中を飛び回って人々がいかに「食べているか」を見て、体験してきた。
残飯を売る人、食べる人、チェルノブイリに暮らし、そこで採れた作物を食べる人、刑務所の食事……壮絶な世界である。
そんな悲惨な話のなかで私がほっとしたのは「観覧車での食事」。ゆっくりとしずしずと廻り続ける観覧車のなかで食事する……観覧車酔いするらしい。ちょっとやってみたい。
70点
私「今地球上に人間ってどれくらいいるの?10億くらい?」
ダンナ「はあぁ?中国だけでも10億以上いるよ。全部で60億くらいじゃない」
そんなにいる中で、毎日充分な食事が摂れているのは……八割くらい? もっと少ない? 切なくなってくる。
筆者は世界中を飛び回って人々がいかに「食べているか」を見て、体験してきた。
残飯を売る人、食べる人、チェルノブイリに暮らし、そこで採れた作物を食べる人、刑務所の食事……壮絶な世界である。
そんな悲惨な話のなかで私がほっとしたのは「観覧車での食事」。ゆっくりとしずしずと廻り続ける観覧車のなかで食事する……観覧車酔いするらしい。ちょっとやってみたい。
70点
博士の愛した数式
小川洋子(新潮社)
優れた数学者でありながら、記憶が八十分しかもたないという、博士。その家に派遣された家政婦の、私。その息子で十歳の、ルート(本名は別にあるのだが、博士がその平らな頭を触ったときにルートと名付けた)。
三人で過ごす、温かで濃い時間を描く。
また素晴らしい作品に出会ってしまった。風変わりな設定が、これ以上ないほどに生かされたストーリーである。
博士が説明する数式の美しさは、たとえ私のような数学嫌いにでも、魔法のように魅力的に響いた。素数とは? 完全数とは? 友愛数とは? それらがまるで芸術作品さながらに、博士の口から語られる。
それから「小さきものを守らねばならぬ」という博士の揺るぎない確信に、胸を打たれた。ルートを思いやる心は、純粋で清らかだ。
95点
優れた数学者でありながら、記憶が八十分しかもたないという、博士。その家に派遣された家政婦の、私。その息子で十歳の、ルート(本名は別にあるのだが、博士がその平らな頭を触ったときにルートと名付けた)。
三人で過ごす、温かで濃い時間を描く。
また素晴らしい作品に出会ってしまった。風変わりな設定が、これ以上ないほどに生かされたストーリーである。
博士が説明する数式の美しさは、たとえ私のような数学嫌いにでも、魔法のように魅力的に響いた。素数とは? 完全数とは? 友愛数とは? それらがまるで芸術作品さながらに、博士の口から語られる。
それから「小さきものを守らねばならぬ」という博士の揺るぎない確信に、胸を打たれた。ルートを思いやる心は、純粋で清らかだ。
95点
生きる歓び
保坂和志(新潮社)
墓地で拾った子猫が、病気を乗り越えて生きる姿を描いた「生きる歓び」、小説家・田中小実昌との交流を描いた「小実昌さんのこと」の二編が収められている。
後者の作品に、興味深い表現があった。「ダラダラ書く作家」という一節だ。その例として小島信夫、田中小実昌、後藤明生の名前が挙がっていた。昨日の続きの今日、といった日常を、さらりと書く作家というのが確かにいる。
そんな世界は退屈なことが多いのだが、読むほうもダラダラと気ままに読むと、案外楽しんで読むことができることもある。この二編も、まさにそんな作品であった。
60点
墓地で拾った子猫が、病気を乗り越えて生きる姿を描いた「生きる歓び」、小説家・田中小実昌との交流を描いた「小実昌さんのこと」の二編が収められている。
後者の作品に、興味深い表現があった。「ダラダラ書く作家」という一節だ。その例として小島信夫、田中小実昌、後藤明生の名前が挙がっていた。昨日の続きの今日、といった日常を、さらりと書く作家というのが確かにいる。
そんな世界は退屈なことが多いのだが、読むほうもダラダラと気ままに読むと、案外楽しんで読むことができることもある。この二編も、まさにそんな作品であった。
60点
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