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死刑囚の記録

加賀乙彦(中央公論新社)

 東京拘置所の医官であった筆者が綴ったドキュメンタリー。

 私はあとがきを最初に読むが、そこに「死刑廃止論」がぶちあげてあった。
 それで興ざめしつつ本文を読んだが、読了しても「なぜ、廃止?」という疑問は残ったままだった。
 死刑囚が監獄に入ってから改心しても、失われた命は戻ってはこないし、その命をかけがえのないものとして生きていた人の悲しみは癒されることはないだろう。
 冤罪という大問題はあろうが、それを除けば死刑が残酷だという筆者の意見には、私は賛成できない。
55点
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あなたと読む恋の歌百首

俵万智(文藝春秋社)

 俵万智が選んだ百人の歌人による、百首の恋の歌。
 見開きの二頁でひとつの歌について解説がなされている。それがとても読みやすくて良かった。
 俵氏の解説は、ときに独りよがりなところもあるが、歌の背景ともいうべき歌人の境遇などについても書かれていて、大いに歌の理解の手助けになった。

 「君かへす朝の敷石さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ」
 北原白秋のこの歌が何となく私は気に入ったが、俵氏によると白秋はこの歌を詠んだとき、人妻との姦通罪に問われて拘留中だったそうだ。
 そうきくと、イメージしていた冬の朝の清々しさは消え、寒々しい曇天のもと、やるせない気持ちで佇む作者の悲しみがじんわりと伝わってくる。
70点

東京日記3 ナマズの幸運。

川上弘美(平凡社)

 エッセイ集。「卵一個ぶんのお祝い。」、「ほかに踊りを知らない。」の続編。
 いつもありがとうございます、川上さん。今回も存分に楽しませていただきました。

 ある集まりで教えてもらったこと。
 「○○にはぬれ煎コーナーがあって、そこのカレーぬれ煎には『インド人もしっとり』という謳い文句がついている」。本当ですか、川上さん。ま、面白いから嘘でもいいです。
 忘年会で酔っ払い、「次に書く小説の題名は『きんたま』にする。絶対する」と力説したのですね。確かに『パスタマシーンの幽霊』に、そのタイトルの短編がありますね。有言実行、素晴らしい。
 最後に。
 とっても気が早いですが、続編を首を長くしてお待ちしてます。
95点

ラストシネマ

辻内智貴(光文社)

 若かりし頃、映画俳優を夢見て街を出た雄さん。病に侵されて東京から舞い戻った彼に、小学生の哲太は惹かれるものを感じる。
 雄さんは、一度だけ端役で映画に出たことがあると聞き、哲太はその映画を必死に探し出すが……。

 ひとつの終わりかけの命があって、その今わの際に、周囲の人々がとびきりの思い出を作ってあげようと奮闘する姿が泣かせる。
 言ってしまえば、冴えない人生を送った雄さん。だがそんな雄さんが、全てを注ぎ込んだ一瞬を、哲太少年は我がことのように大切に思う。その優しさが心に響いた。
 他の登場人物も魅力的なのだが、特に哲太の父親が、強くて優しくて破天荒で、良い味を出している。
80点

対岸の彼女

角田光代(文藝春秋社)

 平凡な主婦である小夜子は、葵という同い年の女性社長の下で働くことになった。仕事は掃除の代行。小夜子は次第に仕事にやりがいを感じ始めるのだった。
 並行して語られるのは、葵の高校時代。ナナコという、一風変わった子と友達になった葵。ポジティブで人懐こくて、でも決して群れないナナコに葵は惹かれるが……。

 くだらない話だと思いながら、貪るように読んでしまった。物語の中のあれもこれも、自分が経験したことだからかもしれない。
 学生時代の、息が詰まるような友達関係。群れない人間に注がれる奇異の目。母となっても終わらないお友達ごっこ。
 葵とナナコのように、本当に気の合う友人が一人いれば充分なのである。何も恐れることはない……そう学生時代の自分に言ってやりたい、遅すぎるけど。

 この作品については、とても読みやすくて良かった。が、小夜子の設定があまりにも安易な気がした。
 仕事に無理解な夫。嫌味な姑。分かりやすいパート主婦像だが、工夫が無いなと思った。
75点

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