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ノルウェイの森

村上春樹(講談社)

 売れましたね、この本。確かにおもしろい。タフで普通の緑、もろくて危なっかしい直子。このコントラストが良い。きっと男性は直子タイプに弱いんだろう、と予想しながら読んだらやはりそうだった。

 感心したのは数々の挿話。筆者の作品は、いつもこの挿話にオリジナリティがあって上手いと思う。
 ピアノを教えていた美少女が自分で服を破って「あの人(女性)に乱暴された」と嘘をつく話。こんなことありえないと思う反面、こういう悪魔的な人間はいるかもしれないとも思う。筆者のテクニックに感服した。
85点
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山椒大夫・高瀬舟

森鴎外(新潮社)

 表題作が有名どころだが、私が一番気に入ったのは「杯」である。
 11、2歳くらいの数人の女の子が、泉のほとりで、銀の杯で水を飲んでいる。そこへ碧眼の少女がやってきて、やはり水を飲もうとするのだが……。
 ほんの数ページの短い作品であるが、そこには選りすぐりの美しい日本語が、詩のように並んでいる。
 少女たちの赤いリボン、泉に投げ入れられたほおずき、銀の鈴を振るような笑い声。こんな情景描写に出会えるから、日本のちょいと昔の純文学を読むのは止められない。
80点

13歳のハローワーク

村上龍(幻冬舎)

 13歳のための、好奇心の対象別職業案内。
 いわゆる専門職の紹介が多いせいか、聞いたこともない職業がけっこうあった。それを読むだけでもとても興味深かったが、筆者と交流のある「プロ」の逸話が、ひときわ面白かった。坂本龍一、コッポラ監督と、名立たる天才たちの振る舞いは、やはりひと味ちがうのであった。
 しかしながら、筆者が書いていることは所詮絵空事というか、理想論であるような気がした。サラリーマンやOLを選択肢から外せ、というのはかなり厳しい意見なのではないだろうか。

 初めから夢を捨てたような人生はつまらないかもしれない。でも特別な才能が無い人間はごまんといるのである。
 あるかないかの才能に縛り付けられて、人生を棒に振るか。地味でもサラリーマンとしての仕事を全うするか。後者を選んだとて、何ら恥じることはないはずである。
70点

冷たい密室と博士たち

森博嗣(講談社)

 ある大学の研究施設で、殺人事件が起きる。現場は完全な密室。偶然現場に居合わせた犀川助教授と大学生の萌絵。彼女が事件の謎を解こうと必死になるのを、犀川は苦々しく思っていた。やがて次の事件が起こり、萌絵は生命の危機に晒されるが……。

 「すべてがFになる」を読んだときはかなり面食らったが、こちらの第二作のほうは、多少読み易くなったような気がした。登場人物たちの特異なキャラクターに慣れただけかもしれないが。
 密室の謎については(たぶん)完璧な説明がなされていたが、私のように理解できずとも悲観することはない、と思う。所詮、作家が都合のいいように作った世界なのだから(負け惜しみ)。
75点

ストレンジ・デイズ

村上龍(講談社)

 落ちぶれた音楽プロデューサーの男が主人公。ふとしたことで、天才的な演技力を持つトラックドライバーのジュンコと出逢う。彼は彼女の映画が撮りたいと、痛切に願うようになる。

 面白くないとは言わないが、人に勧められるような本ではない、作者の毒気に当てられるというか、それにとても読みにくい、こんなふうに句読点がヘンだし、誰かのセリフが長々といつ果てるとも知れないように続くし。
 と、まねして書いてみたが、こういう文体って書く側は楽だ、ということに気付いた。
 筆者はどうやら、美人、金持ち、権力者、あるいはセンスの良い人間しか認めていないようだ。いちいち「……ベンチに座ってホカ弁を食べるようなブスOL」なんて表現する必要はないと思うのだが。他にたとえようはないのか。
45点

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