Back To The Past
よしなしごとども 書きつくるなり
輪廻
明野照葉(文藝春秋社)
東京・大久保。時枝は怪しい商売に手を染めつつも、女手ひとつで香苗を育て上げた。やがて香苗は結婚して茨城へと移り住んだ。茨城・O町。香苗は姑とそりが合わず、ついには娘の真穂を連れて時枝の元に転がり込む。だが時枝は実の孫である真穂に、なぜか冷たい態度を取る。不審に思った香苗は、時枝のふるさと、新潟を訪ね、時枝の過去を探ろうとするが……。
怪談「累ヶ淵」になぞらえた、女三代(四代?)の因縁が絡まってゆくさまがおどろおどろしい。特に、年端もゆかぬ真穂に老女の霊が乗り移って「キョキョキョキョ」と笑うシーンなど、背筋が寒くなった。
映像化したら面白そうな作品だが、主人公である香苗が魅力に乏しい人間であるところがネックか。
85点
東京・大久保。時枝は怪しい商売に手を染めつつも、女手ひとつで香苗を育て上げた。やがて香苗は結婚して茨城へと移り住んだ。茨城・O町。香苗は姑とそりが合わず、ついには娘の真穂を連れて時枝の元に転がり込む。だが時枝は実の孫である真穂に、なぜか冷たい態度を取る。不審に思った香苗は、時枝のふるさと、新潟を訪ね、時枝の過去を探ろうとするが……。
怪談「累ヶ淵」になぞらえた、女三代(四代?)の因縁が絡まってゆくさまがおどろおどろしい。特に、年端もゆかぬ真穂に老女の霊が乗り移って「キョキョキョキョ」と笑うシーンなど、背筋が寒くなった。
映像化したら面白そうな作品だが、主人公である香苗が魅力に乏しい人間であるところがネックか。
85点
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まれに見るバカ
勢古浩爾(洋泉社)
帯には「抱腹絶倒の『当世バカ』図巻!」とある。
有名バカと無名ばか。全身バカと部分バカ。バカ女にバカ男。もうとにかくバカづくしの本である。
紹介したい部分がたくさんあるのだが、その中でも選りすぐりをひとつ。「がんばれ」と言われたくない人。
めいっぱい頑張ってるのに「頑張れ」と言われるとむかつく、何をどう頑張れば良いのでしょう?……筆者の答えは「だったらがんばらなくていいよ」。
非常に明快で胸がすく答えではあるまいか。
私も以前からこういう意見には、悲劇のヒロイン気分とでもいうような胡散臭さを感じていたのだ。
日本語はそのへんの語彙が乏しいのだし、がんばれ、でいいじゃないか、という筆者には大賛成である。
85点
帯には「抱腹絶倒の『当世バカ』図巻!」とある。
有名バカと無名ばか。全身バカと部分バカ。バカ女にバカ男。もうとにかくバカづくしの本である。
紹介したい部分がたくさんあるのだが、その中でも選りすぐりをひとつ。「がんばれ」と言われたくない人。
めいっぱい頑張ってるのに「頑張れ」と言われるとむかつく、何をどう頑張れば良いのでしょう?……筆者の答えは「だったらがんばらなくていいよ」。
非常に明快で胸がすく答えではあるまいか。
私も以前からこういう意見には、悲劇のヒロイン気分とでもいうような胡散臭さを感じていたのだ。
日本語はそのへんの語彙が乏しいのだし、がんばれ、でいいじゃないか、という筆者には大賛成である。
85点
裏庭
梨木香歩(新潮社)
思春期の女の子照美は、謎の洋館に忍び込んだ。屋敷内には大鏡があって、彼女はその中に存在する「裏庭」という異界へと誘なわれる。
照美の大冒険は「ファンタジー」と呼ぶには設定が複雑すぎるような気がした。が、分からない部分は流して読んでしまっても大勢に影響はない。
裏庭では彼女が何かを思った瞬間に世界が切り替わる、という部分がある。その辺が「所詮は夢物語」と読み手に思わせてしまう粗さを感じた。
良かった点をひとつ。彼女のなかで膨らんでいく孤独感、寂寥感は丁寧に描かれていて、上手い。幸福な結末を望まずにはいられなかった。
60点
思春期の女の子照美は、謎の洋館に忍び込んだ。屋敷内には大鏡があって、彼女はその中に存在する「裏庭」という異界へと誘なわれる。
照美の大冒険は「ファンタジー」と呼ぶには設定が複雑すぎるような気がした。が、分からない部分は流して読んでしまっても大勢に影響はない。
裏庭では彼女が何かを思った瞬間に世界が切り替わる、という部分がある。その辺が「所詮は夢物語」と読み手に思わせてしまう粗さを感じた。
良かった点をひとつ。彼女のなかで膨らんでいく孤独感、寂寥感は丁寧に描かれていて、上手い。幸福な結末を望まずにはいられなかった。
60点
赤道
明野照葉(光文社)
バンコクに住む修二のもとに、母親が亡くなったという報せが届く。日本へ戻った彼は、実家の登記証書を持ち出し、そのままバンコクへと帰ってきてしまう。
発作的なその行動は、彼の半生を表すかのようだった。何人もの人間を死に至らしめた、狂気のなせる業……。
作品の根底には、バンコクのまとわりつくような暑さが漂っている。繰り返されるその描写は、読んでいてつらかった。
また、修二が、妻である綾にした仕打ちもひどいものだった。綾の苦悩を理解しながら、ごまかすようなことしか言わず、彼女を追いつめたのだ。その卑怯なやり口には、まったくいらいらさせられた。
65点
バンコクに住む修二のもとに、母親が亡くなったという報せが届く。日本へ戻った彼は、実家の登記証書を持ち出し、そのままバンコクへと帰ってきてしまう。
発作的なその行動は、彼の半生を表すかのようだった。何人もの人間を死に至らしめた、狂気のなせる業……。
作品の根底には、バンコクのまとわりつくような暑さが漂っている。繰り返されるその描写は、読んでいてつらかった。
また、修二が、妻である綾にした仕打ちもひどいものだった。綾の苦悩を理解しながら、ごまかすようなことしか言わず、彼女を追いつめたのだ。その卑怯なやり口には、まったくいらいらさせられた。
65点
夏の終り
瀬戸内晴美(新潮社)
染色の仕事で生計を立てている知子。彼女は八年もの間、妻子持ちの慎吾と半同棲し、しかも他に凉太という恋人までいる。
一見奔放に見える知子だが、その実「馴れ合いの関係」にがんじがらめにされ、引くことも進むこともままならなくなっている。
知子と慎吾のように、悪気はないが性悪な人達の話は、読んでいて疲れる。常に誰かが問題を解決してくれるのを待っていて、それは絶望ゆえだとうそぶく。甘ちゃん同士の傷のなめあいに他ならない。
ひとつ、心に残る表現があった。他人を疑うことを知らない慎吾をさして、知子は育ちの良さの鷹揚さだと言い、一方凉太は自分のことしか見えない利己主義だと言う。
きっとどちらも正解なのだろう。
60点
染色の仕事で生計を立てている知子。彼女は八年もの間、妻子持ちの慎吾と半同棲し、しかも他に凉太という恋人までいる。
一見奔放に見える知子だが、その実「馴れ合いの関係」にがんじがらめにされ、引くことも進むこともままならなくなっている。
知子と慎吾のように、悪気はないが性悪な人達の話は、読んでいて疲れる。常に誰かが問題を解決してくれるのを待っていて、それは絶望ゆえだとうそぶく。甘ちゃん同士の傷のなめあいに他ならない。
ひとつ、心に残る表現があった。他人を疑うことを知らない慎吾をさして、知子は育ちの良さの鷹揚さだと言い、一方凉太は自分のことしか見えない利己主義だと言う。
きっとどちらも正解なのだろう。
60点
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