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ゆれる

西川美和(ポプラ社)

 家業を継いで実家に残った兄・稔。地元を離れて東京でカメラマンになった弟・猛。法事で久しぶりに故郷に帰った猛は、幼なじみである智恵子と再会する。そして三人でドライブに出掛けたとき、事件は起きた……。

 各章ごとに語り手が変わるのだが、その色の変え方がとてもうまい。ワルぶって尖がっているが、ことが起きると保身にはしる猛。優しくて温厚だが、実は得体の知れない何かを隠している稔。二人のひと言ひと言が、その内面を見事にあぶりだす。
 脇役たちの章も、それぞれに良かった。息がつまりそうな田舎で不満を抱えつつも、穏やかに、身の丈にあった生活を送る人々。だが彼らの「日常」も案外もろい。その危うさを、筆者は冷徹な目で描き出している。
85点
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完全無欠の名探偵

西澤保彦(講談社)

 富豪の源衛門は、孫娘りんの動静を探るため一人の男を彼女の元へ送り込む。その男、山吹みはるは不思議な能力を持つ男だった。彼と会話を交わしたものは、本人も忘れていた事柄を思い出し、さらに深い考察をすることになり、思いも寄らぬ事実を発見するのだった。

 変わった設定で面食らったが、みはるの性格の良さゆえか、読む気が失せるということはなかった。
 みはるは何もしてないのに、事件の真相が次々に明らかになってゆく過程は爽快感があったが、同時に登場人物が多すぎてくどい感じも受けた。
80点

スタジアム 虹の事件簿

青井夏海(東京創元社)

 連作短編集。
 万年最下位のプロ野球球団「東海レインボーズ」。球団のオーナーである多佳子が、いろいろな事件の謎解きをする。
 野球の試合内容と、事件の動機などが絡み合うという、斬新な手法が楽しめた。
 完全試合目前、たった一球の判定でがたがたに崩れていくピッチャー。
 完全犯罪を企む犯罪者も、小さなほころびから信じ難い失敗をしてしまう……そんな繋がりが無理なく描かれている。
 また、野球を知らない人でも知らないなりに楽しめる作品だと思う。
75点

縦走路

新田次郎(新潮社)

 登山仲間である蜂屋と木暮。二人は八ヶ岳で、千穂という女性と出会う。
 彼女は、女流登山家は不細工である、という定説を覆す美女であった。だが彼女はまれに見る自分本位な人間であった。
 二人の男は、彼女に振り回されつつも、彼女に惹かれてゆく……。

 鼻持ちならない千穂にイライラし通しだった。
 彼女の学生時代のライバル、美根子という女性が登場するが、彼女は不倫していたり、好きな男性を姑息な手段で手に入れようとしたりする。
 でも千穂の性格よりまだ彼女のほうがマシな気がした。
 ところで、木暮が登山に向かう蜂屋に、ナイロンザイルを渡そうとするシーンがある。蜂屋は「前穂高でナイロンザイルの切断事故があった」という話をする。
 これは先日読んだ井上靖の「氷壁」のことであろう。
 作品どうしがこういうふうに繋がってゆくのはとても興味深い。
60点

単発企画~グレコローマンかたぎ

そね(カイ Web-no HON)

 私がいっぺんで気に入ったサイト「グレコローマンかたぎ」のコンテンツ「単発企画」。
 その中から選りすぐりをまとめたのが本書である。
 いや、正確に言うと「単発企画」は閉鎖されてる部分が多いため、この本が選りすぐりかどうかは謎である。
 それでも非常に面白いことは断言できるし、「お友達にすすめ」ないで欲しいと筆者は書いているが、最近愉快な本がないとお嘆きの貴兄にはぜひ読んでいただきたい一冊である。
 私のいちおしは、おまけの「きのこの歌」。これを読んでも笑わない人とは、きっと仲良くなれないと思う。
 さてこの本は普通の書店では入手できません。興味が湧いた方は万能書店というサイトへどうぞ。
90点

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