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萩原朔太郎詩集

萩原朔太郎(新潮社)

 朔太郎は誕生日が一緒なので、勝手に親近感を覚えていた。
 が、彼の詩は感受性が豊かな人にしか味わえないものであろう。私など「失格」なのである、本当は。
 この詩集は悲しい言葉が多い。あらゆるものを突き放したい。そう言いながらも寂寥感に押しつぶされそうな自分。そんなイメージを抱かせる詩集であった。
60点
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しゃばけ

畠中恵(新潮社)

 大店の若だんなである一太郎。身体は脆弱だが頭は切れる。そんな彼がある夜、人殺しを目撃する。身近にいるあやかしたちとともに、事件の謎を解こうとする一太郎だったが……。

 登場する妖怪たち――鈴の化身・鈴彦姫、行李のかげから小さな顔を覗かせる鳴家(やなり)――が、可愛く微笑ましい。
 ストーリーは少しまどろっこしいものの、そこそこ楽しめた。が、会話が手馴れていない感じがした。いくら世間知らずとはいえ、若だんなの物言いは幼稚すぎではないだろうか。
60点

どんどん橋、落ちた

綾辻行人(講談社)

 五つの中短編集。
 いずれも最後に「さて、犯人は?」という質問が読者に投げ掛けられている。もちろん私のような間抜けには一つも分からなかった。
 「伊園家の崩壊」を紹介しよう。明るく平和だった伊園家。だが母・常が狂死してからすべての歯車が狂い始め、一家は崩壊の道を辿る。それは娘・笹枝が殺害されるという事件で、決定的なものとなる。
 と、ここまで読んで気付かれたかたも多いと思うが「イソノ家」と書くと、よりピンとくるだろうか。筆者は「フィクション」だということを強調しているが、あの平和な家族がこんなことになったら、という仮定の話として読むべきなのだろうか……ちょっと悪趣味な気もした。
65点

ゲルマニウムの夜

花村萬月(文藝春秋社)

 これが芥川賞受賞作……過剰にエロでグロ。思わず読み飛ばしたくなるシーンあり。でも文章は細部まで考え抜かれているという感じを受ける。職人芸という意味で谷崎潤一郎を思い出した……のは私だけだろうな。何年も日本語を勉強してぺらぺら話せるようになった外国人でも、この文章は書けないだろう。
 筆者は以前、本の雑誌「ダ・ヴィンチ」でエッセイを連載していた。それを読んだときも、内容は別として「頭いいな、この人」と思った。
70点

一瞬の光

白石一文(角川書店)

 東大卒で一流企業に勤める橋田。
 彼はふとしたことで香折という女性と出会う。複雑な家庭に育ったという香折を知るにつけ、橋田は彼女のことが頭から離れなくなる。いっぽうで、彼は社長の姪である女性との交際も続けるのだった。

 どいつもこいつも超エリート、美男美女で、最初は物語に感情移入できなかった。
 だが読み進むうちに、登場人物たちの本音が透けてみえてきて、気付いたら夢中になって読んでいた。
 主人公の橋田というのは、実は非常に危険な男で、その根底にあるのは冷たさだと私は思った。
 最終的に一人の女性を彼は選ぶのだが、それは優しさゆえでは決して無い。彼の執着心がそうさせたような気がして、なんだか薄ら寒い気持ちになってしまった。
75点

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