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ぼくのともだち

エマニュエル・ボーヴ(白水社)

 傷痍軍人の「ぼく」は、年金をもらって細々と暮らしている。孤独で寂しい彼は、街へ出ては友人になってくれそうな人を探す。が、彼の期待はいつも裏切られる……。

 主人公が友達になれなかった五人の人物が登場する。その五人というのが実はマトモで、オカシイのは主人公のほうなのである。
 まず、友達が自分より幸福なのが許せない。そう、明確に彼は「許せない。」と思うのである。醜い嫉妬心を恥じるどころか、そういう相手とは「絶対理解し合えない」とまで思っている。
 また、親切にしてくれた人にも、恩をあだで返すような真似を平気でする。
 とにかく身勝手で腹黒い「ぼく」。だが、彼があまりにも幼稚ですっとこどっこいなので、怒る気力さえ削がれてしまう。
 彼はいつか自分の愚かさに気付くのだろうか。気付かなそうだな、まぁ勝手にいつまでも悩んでろ、と読了後思わず苦笑してしまった。
90点
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ほとんど記憶のない女

リディア・デイヴィス(白水社)

 全51編からなる、短編・散文集。
 訳者が岸本佐知子氏だったし、彼女が「運命の本と出会ってしまった!」と激賞していたので期待して読んだが、見事にハズレだった。

 ほとんどのものは意味不明。唐突に物語、いや妄想は始まって、オチもなく終わる。訳者はそんな作品群に「鬼気迫る」ものを感じたり、「焦燥感を浮かび上がらせている」と思ったりしたようだが、そう言われて読み返してもなお「どこが?」という感想しか持てなかった。
 奇をてらえばいいってものでもないと思うのだが……いや、私ごときには理解できない深淵が隠されているのか? とにかく、謎だらけの作品集であった。
15点

ポップ1280

ジム・トンプスン(扶桑社)

 こういう本を読むと、しみじみ考えてしまう……性善説・性悪説。私は、ほとんどの人間は「善」で生まれてきていると思っている。でもほんの一握りの「悪」生まれの人間が、悪さをしているのではないだろうか。
 たとえばこの本の主人公。平気で人を殺して、しかも他人に罪をなすりつける。頭ん中、保身と女のことで一杯。こういう人間は、やはり善ではないだろう。

 この本は「このミステリーがすごい!2001年版」海外編で第一位を獲得している。しかも実際に執筆されたのは1960年代なのに、である。各界の有名人が(スタンリー・キューブリック監督など)、彼の作品を激賞している。
 しかしながら、この本のどこにそれほどの価値があるのか、正直わからない。時間が有り余っていて、日がな一日読書できるような状況なら、こういう本を読むのもまた一興。でも今の私はそうではない。なのにこの本……時間の無駄だった。
 もしかすると、キリスト教を否定するために書かれたのだろうか。何だか知らんが、傷んだモノを食べてしまったような読後感。
10点

捕虜収容所の死

マイケル・ギルバート(東京創元社)

 時は第二次世界大戦中。イタリアの捕虜収容所では、英国の捕虜たちが、脱走すべく密かにトンネルを掘り進めていた。ところがそのトンネル内で崩落が起き、一人の捕虜が死亡してしまう。はたして彼の死は事故だったのだろうか。

 「登場人物」のページが三ページにもわたっており、しょっぱなからうんざりだった。しかも、それぞれの役柄をよく把握することが、ストーリーを理解する上で必須なのである。それを怠ると、謎解きのところで疑問だらけになる……私のように。
 そういう私の頭の悪さを差し引いても、面白い作品とは言えない気がした。終盤の大脱走劇のあたりは多少スリルがあったが、そこで謎を解いて終わりにしたほうが良かったと思う。
 15、16章は蛇足ではないだろうか。
55点

殺人交叉点

フレッド・カサック(東京創元社)

 二つの中編が収められている。
 私は表題作より「連鎖反応」のほうが気に入ったのでそちらを紹介したいと思う。
 観光協会に勤めるジルベール。彼には可愛い婚約者がいたが、以前から付き合っていた女性が妊娠してしまう。彼は、より多くの収入を得るために昇進したいと強く願う。そのために上司を殺す計画を練るが……。

 ジルベールが虎視眈々と殺人の機会を狙って苛立つ様子がうまく描かれている。「ミステリ小説で読んだのとは大違い」だと嘆く彼は、罪を犯そうとしているのに「最善を尽くす」とのたまう。その勘違い加減が笑える。
 ラストのエピローグもひねりが効いていて良い。
75点

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