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よしなしごとども 書きつくるなり
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アガサ・クリスティ(早川書房)

 ある朝新聞に殺人の予告が掲載される。で、その通り一人の男が殺される。彼は予告された屋敷に強盗目的で押し入り、逆に撃たれて死んでしまう。謎解きするのはミス・マープル。
 やっぱりクリスティは上手い。細かいところが読ませる。
 私が気に入ったのは、おしゃべりな老婆を指して巡査が報告書に「猫!」と書いたというくだり。言い得て妙。
 それから世間に怨みを持っている人間は「世間は当然自分達に償いをすべきだ」と考えているという部分。確かにそういう人間は多いように思う。
75点
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トマス・H・クック(文藝春秋社)

 まず、劇中劇というか、小説中小説の手法がおもしろかった。
 主人公は、ミステリー作家。彼は幼くして両親を亡くし、その後、姉も惨殺されてしまう。しかも彼の目の前で。彼は、事あるごとにそのシーンを回想する。姉がどんなふうに殺されたか、どんなことを言ったか。それが「しつこい」と「適度」の間を行ったり来たり……かなり微妙。

 この作品、全体的には好印象だったが、疑いを掛けられていた人物が実は犯人ではなかった、ということがわかった後の部分が、少しだけ説明不足のような気がした。単に私の読み込み不足か(今回はなぜか謙虚)。
70点
ジョン・ボイントン・プリーストリー(岩波書店)

 三幕からなる戯曲。さくっと読める長さだが、内容は濃い。
 街の実力者バーリング。彼の家では今宵、娘の婚約を祝うささやかなパーティが催されていた。そこへ突然グール警部という男が訪ねてくる。ある女性が自殺したことについて、バーリング家の人々に訊きたいことがあるという……。

 誰もが自分は無関係だと思っていた。だが誰もが女性の人生に多大な影響を与えていた。その事実を知ったとき、素直に反省するもの、罪を認めようとしないもの、言い訳に終始するもの、それら様々な反応が各人の人間性をあぶりだしていて面白い。

 娘が父親に言ったひと言、
 「問題は、お父さんたちが何ひとつ学んでないってことなのよ」
 は、何があっても自分の価値観を変えようとしない人間を痛烈に批判していて、私自身もぎくりとなった。
85点
ブリジット・オベール(早川書房)

 医者であるマーチ博士には、四つ子の息子達がいた。とてもよく似た、美しい四人。でもその中の一人は殺人鬼だった。彼は殺人日記をつけていて、それをメイドの娘が見つけて盗み読みしてしまう。

 殺人者の日記とメイドの日記が交互に書かれているが、それが面白かった。残忍で狡猾な殺人者、饒舌で低レベルなメイド。この対比が効いている。ただ殺人者の正体は……ちょっと不満。手法として、ルール違反すれすれではないだろうか。
60点
カーター・ディクスン(早川書房)

 英国の辺鄙な村に、後家と呼ばれる奇妙な岩があった。
 あるとき、村中の人々に中傷の手紙が届きだし、ついには自殺者まで出てしまう。手紙には「後家より」と署名がなされていたが、その正体は誰なのか。

 バカミスの原点との評もあるというこの作品。読んで納得、である。
 ストーリーにはひねりがなく、セリフには無駄なひねりが多すぎで、読みづらいことこの上ない。
 また、犯人が自らの犯行について口を滑らすシーンがあるのだが、これは誰が読んでもそれと気付くだろう。
30点
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