村田沙耶香(文藝春秋社)
幼いころから変わった子どもだった恵子。たとえば小学生のとき、けんかする男子を「止めて!」と同級生が叫んだら、恵子はスコップで片方の男子を殴った。止めればいい、という迷いのない単純な思考回路。
長じて大学生となった恵子はコンビニでバイトを始める。マニュアル通りにすればいい世界。彼女は初めて「正常な部品」になれたと安堵したのだが……。
読んでいて、とても心がざわざわした。はたから見たら恵子は明らかに異常なのだが、本人は何が異常なのかさっぱり分からず、相手の表情や言葉から「これは言ってはいけない」と学習するだけ。何らかの障碍者なのか? と疑問がふくらんでいった。
バイト店員のまま18年が過ぎて、次第に周囲の「ずっとコンビニ店員?」「ずっと彼氏もいなくて独身?」という疑問もふくらむ。恵子はどう答えを出すのだろう? と思ったが物語は意外な方向へ進む。
ネタバレなので詳しくは書けないが、そこからの生活もただ「正常であること」を求める虚しいものであった。ただし本人はまったく虚しさなど感じておらず、面倒なことになったな、ぐらいの感じなのがまた怖かった。
そう、恵子が怖かった。
こういう生きづらさを抱えている人は現実にもいそうだが、「あんまり邪魔だと思うと、小学校のときのように、相手をスコップで殴って止めてしまいたくなる」なんて言われたらやはり恐ろしい。
ラスト、恵子はあることに気付くが、それには少しほっとした。
今後きっと彼女は誰にも迷惑をかけない、もちろん犯罪者にもならない、その時そばでわめいていた男よりぜんぜん真っ当だと思った。
90点
幼いころから変わった子どもだった恵子。たとえば小学生のとき、けんかする男子を「止めて!」と同級生が叫んだら、恵子はスコップで片方の男子を殴った。止めればいい、という迷いのない単純な思考回路。
長じて大学生となった恵子はコンビニでバイトを始める。マニュアル通りにすればいい世界。彼女は初めて「正常な部品」になれたと安堵したのだが……。
読んでいて、とても心がざわざわした。はたから見たら恵子は明らかに異常なのだが、本人は何が異常なのかさっぱり分からず、相手の表情や言葉から「これは言ってはいけない」と学習するだけ。何らかの障碍者なのか? と疑問がふくらんでいった。
バイト店員のまま18年が過ぎて、次第に周囲の「ずっとコンビニ店員?」「ずっと彼氏もいなくて独身?」という疑問もふくらむ。恵子はどう答えを出すのだろう? と思ったが物語は意外な方向へ進む。
ネタバレなので詳しくは書けないが、そこからの生活もただ「正常であること」を求める虚しいものであった。ただし本人はまったく虚しさなど感じておらず、面倒なことになったな、ぐらいの感じなのがまた怖かった。
そう、恵子が怖かった。
こういう生きづらさを抱えている人は現実にもいそうだが、「あんまり邪魔だと思うと、小学校のときのように、相手をスコップで殴って止めてしまいたくなる」なんて言われたらやはり恐ろしい。
ラスト、恵子はあることに気付くが、それには少しほっとした。
今後きっと彼女は誰にも迷惑をかけない、もちろん犯罪者にもならない、その時そばでわめいていた男よりぜんぜん真っ当だと思った。
90点
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