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エリザベスの友達

村田喜代子(新潮社)

97歳、認知症の初音さんは老人ホームで暮らしている。娘である満州美、千里がホームを訪れては初音さんと面会する。
戦後、中国・天津から引き揚げてきた初音さんの意識は、どうやらそこにあるらしい。自由できらびやかだった天津。彼女は過去へと引き戻されて……。

文庫版の表紙絵が、この作品のすべてを表しているようだ。美しくて見入ってしまう。
その美しさと裏腹なのが初音さんの「今」である。
自分がどこにいるのかも分からず、娘のことも忘れ、ただ生きながらえる日々。認知症というのはなんて残酷なのだろう。
老いを認識せずに昔の楽しかった思い出に生きていて、ある意味しあわせ、という描き方をされているが、はたしてそうだろうか。
こんな一節がある。
リビングルームのテーブルのあちこちに、破れ昆布が磯へ打ち上げられて引っ掛かったように、年寄りたちの姿がある。
……そんなふうに思われて、シモの世話をされて、よだれかけをして食事を口まで運んでもらって。
そこまでして生きたくはない、と思うのは傲慢なのだろうか? と老いについて深く考えさせられる作品であった。
70点

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