村田沙耶香(朝日新聞出版)
小学生の結佳はごく普通の子だったが、習字教室に一緒に通う伊吹陽太にだけは特別な感情を抱いていた。
純粋で何も知らない伊吹をからかって遊ぶ結佳、時にはエスカレートしてキスをせがむようなことも。
中学生になった結佳は、スクールカーストでは下位に甘んじていた。
いっぽう相変わらずのほほんと学校生活を送っている伊吹は、女子にモテる男の子へと変貌していた……。
一言でいって分かりすぎる話であった。
小・中学生という微妙な年齢の心のゆらぎを、ここまで鮮烈に描いている物語はそうそうないだろう。
たとえば結佳は、昼休みにひとりで校庭を散歩する。
「こうしていると、教室で騒いでいる子たちは脇役で、自分が主人公であるような気がしてくる。誰かが、高いところで私を主人公にした物語を紡いでいるような気持ちだ。」
ああああああと手で顔を覆いたくなるような、こんな気持ち。不細工な自分を卑下しつつ、でも夢を見てしまう気持ち。分かる、からこそ心が痛む。
それから女子同士のくだらないけど絶対的な暗黙のルール。
カースト上位の子たちの気まぐれには上手く付き合い、ご機嫌を損ねないようにすること。
褒められたら、必ず褒め返すこと。相手の待っている褒め言葉を投げること。
そうやって女子たちは危うい関係を続けていく。
いろいろな人間が集まるはずの学校という場所で、どうしてこうも同じような組織が出来上がってしまうのか、心底不思議である。
やがて結佳は、カースト最下位の信子ちゃんを通して、ひとつの結論へとたどり着く。
本当の美しさとは何か。顔の美醜ではないとしたら、それは何なのか。
そこから彼女は、精神的に成長を遂げた伊吹を通して、さらに確かな価値観を得る。
結佳と伊吹が語り合うラストは少しの気持ち悪さと、大きな爽快感があった。
95点
小学生の結佳はごく普通の子だったが、習字教室に一緒に通う伊吹陽太にだけは特別な感情を抱いていた。
純粋で何も知らない伊吹をからかって遊ぶ結佳、時にはエスカレートしてキスをせがむようなことも。
中学生になった結佳は、スクールカーストでは下位に甘んじていた。
いっぽう相変わらずのほほんと学校生活を送っている伊吹は、女子にモテる男の子へと変貌していた……。
一言でいって分かりすぎる話であった。
小・中学生という微妙な年齢の心のゆらぎを、ここまで鮮烈に描いている物語はそうそうないだろう。
たとえば結佳は、昼休みにひとりで校庭を散歩する。
「こうしていると、教室で騒いでいる子たちは脇役で、自分が主人公であるような気がしてくる。誰かが、高いところで私を主人公にした物語を紡いでいるような気持ちだ。」
ああああああと手で顔を覆いたくなるような、こんな気持ち。不細工な自分を卑下しつつ、でも夢を見てしまう気持ち。分かる、からこそ心が痛む。
それから女子同士のくだらないけど絶対的な暗黙のルール。
カースト上位の子たちの気まぐれには上手く付き合い、ご機嫌を損ねないようにすること。
褒められたら、必ず褒め返すこと。相手の待っている褒め言葉を投げること。
そうやって女子たちは危うい関係を続けていく。
いろいろな人間が集まるはずの学校という場所で、どうしてこうも同じような組織が出来上がってしまうのか、心底不思議である。
やがて結佳は、カースト最下位の信子ちゃんを通して、ひとつの結論へとたどり着く。
本当の美しさとは何か。顔の美醜ではないとしたら、それは何なのか。
そこから彼女は、精神的に成長を遂げた伊吹を通して、さらに確かな価値観を得る。
結佳と伊吹が語り合うラストは少しの気持ち悪さと、大きな爽快感があった。
95点
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