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K
三木卓(講談社)

筆者の配偶者だったK(詩人・福井桂子)についての私小説。

最初に言おう、とても良かった、気に入った。
Kは気難しくて自分勝手で、おおいに大胆不敵で扱いにくい人だったようだ。
三木氏にとっても謎多き女性だったようで、「Kは別人であるので、その心のうちはわたしにはわからない」とはっきり書いている。
しかしわがまま放題のKを、あきらめのような、どこか楽しんでいるかのような筆致で、三木氏は描いている。か細いけれど尽きない、愛情を感じた。

さて、何がそんなに気に入ったのかというと、単純にKが気に入ったのだった。

結婚を言い出した筆者に対する返事が、
「他人てだめなの」「一人でいるのが、好きなの」。

詩の草稿を読んで軽く批評したら激怒して、
「詩のことなんか何もわかってないくせに。(略)ここの言葉の飛躍こそが生命なのよ!」。

極め付きは、東北地方からポツンと女子大に入学した当初を回想して言った言葉。
「東京出身者は、名門の女子高なんかからは、かたまりになって入ってくるでしょう。だからもう入学式の日にはグループが出来てしまっていて、(略)ちょっと、いやな感じだった」。
1950年代と現代と、女性というものの変化の無さに驚くと同時にKに同情してしまった。
その後も友人らしい友人もできず、辛かったらしい。
しかし詩人としての才能はあったわけで、孤独のなかにも心の支えがあるKがうらやましくもあった。

以前、太宰治の妻が書いた本も、とても面白く読んだが、(男女こそ逆転しているものの)破滅的な芸術家と支える人、という組み合わせに心惹かれるのかもしれない。
100点

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