高村薫(毎日新聞社)
ネットのあやしげなサイトで出会った2人の男。彼らは気の向くままにATMを破壊し、コンビニ強盗をし、見知らぬ住宅で強盗殺人をはたらく。彼らに良心はあるのか。
これは犯人の人間性云々という書評がきっと多いと思う。だからあえて違う切り口で感想を書いてみる。
私の心に残ったのは、殺されたほうの4人の命についてである。夫婦ともに医師、子ども2人は筑波大付属小・中学に通っている、何不自由のない裕福な家。殺害された翌日、ディズニーシーへ行く予定だった4人。
彼らのまばゆいような、それでいてごく普通の日常が物語の前半で描かれている。小さなことで喜んだり、迷ったり、悩んだり……そんな微笑ましい日常は、まさに「冷血」な犯人の手によって崩れ去る。
事件の起きた時や、その後(は当たり前だが)の4人の心情は一切描かれていない。その圧倒的な不在、死というものの絶対性に呆然としてしまう。
彼らのまばゆいような、それでいてごく普通の日常が物語の前半で描かれている。小さなことで喜んだり、迷ったり、悩んだり……そんな微笑ましい日常は、まさに「冷血」な犯人の手によって崩れ去る。
事件の起きた時や、その後(は当たり前だが)の4人の心情は一切描かれていない。その圧倒的な不在、死というものの絶対性に呆然としてしまう。
犯人たちにとって、一家の命は虫けら同然であった。なぜ殺した? 何となく。そんな狂気を持った人間が、現実の世界でもニュースをにぎわせている。神も仏もないのかもしれない。
95点
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