重松清(新潮社)
短編が連なってゆるやかな長編をかたちづくるお話(文庫版あとがきより)。
物語の舞台は小学校高学年から中学にかけての学校。そこには鼻持ちならない男子が、優しくて気弱な女子が、八方美人ゆえに疲弊してゆく女子が、ライバルに勝てずに焦る男子が、いた。
『ふらふら』を紹介しよう。クラスで孤立するのがこわくて、道化を演じる堀田芳美。しかしささいなきっかけで「はじかれ」てしまう。昨日まで、さっきまで友だちだと思っていた女子が、冷たい言葉を投げつける。
その空気、雰囲気が痛いほどわかるから、私の胸も締め付けられる。
どの話も何となく経験したような、あるいはいつか見たようなものが多い。その頃の自分の未熟さや自意識過剰っぷりが思い出されて、居てもたってもいられないような気持ちになった。
そして今、この瞬間も学校で苦しんでいる子はたくさんいるだろう。学校だけがすべてじゃない、なんて言っても気休めにしか聞こえないだろう。そんな子に、この本を最後まで読んで欲しい、と(作者でもないくせに)痛切に願った。
今日を乗り越えたら明日はくる。明日を乗り越えたらあさってが来る。そうしていつか「戦争」は終わる、はずだから。
85点
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