内田百閒(パロル舎)
短編集。六つの作品が収められている。
『件(くだん)』がよかった。
からだが牛で顔だけ人間の「件」になってしまった「私」。
「件」は何らかの予言をするというが「私」は何を予言したらいいのか分からない。
人々が集まってきて途方に暮れる「私」。
百閒の謎めいた文章もすばらしいが、版画がまた良い。
おどろおどろしく、それでいてどことなく滑稽。
「件」のラストの絵がカバーにも描かれているが、物語のラストのおかしみをうまく表現していると思う。
短編集。六つの作品が収められている。
『件(くだん)』がよかった。
からだが牛で顔だけ人間の「件」になってしまった「私」。
「件」は何らかの予言をするというが「私」は何を予言したらいいのか分からない。
人々が集まってきて途方に暮れる「私」。
百閒の謎めいた文章もすばらしいが、版画がまた良い。
おどろおどろしく、それでいてどことなく滑稽。
「件」のラストの絵がカバーにも描かれているが、物語のラストのおかしみをうまく表現していると思う。
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エリック・バトゥー、谷内こうた(講談社)
1月から12月まで、自然の中で生きる動物たちの想いを描いた一冊。
どの絵も、広々とした場所があって、そこに動物がちょこんと描かれている。
動物たちはみなユーモラスで可愛い。
「1月、まっている……」で始まる月々の短い言葉も、絵の邪魔になることなく良い味を出している。
それにしても11月は、もうさむい……って。
私の生まれ月は、作家でさえしゃれたことが言えない月なのか?
1月から12月まで、自然の中で生きる動物たちの想いを描いた一冊。
どの絵も、広々とした場所があって、そこに動物がちょこんと描かれている。
動物たちはみなユーモラスで可愛い。
「1月、まっている……」で始まる月々の短い言葉も、絵の邪魔になることなく良い味を出している。
それにしても11月は、もうさむい……って。
私の生まれ月は、作家でさえしゃれたことが言えない月なのか?
宮澤賢治(パロル舎)
蟹の兄弟が、青い水の底で見た世界。
色がすばらしい。
五月の、光差す水の中は青磁色。
十二月のつめたい水は紺青色。
そして物語が綴られた文字の背景色は青鈍(あおにび)。
うっとりするような色使いである。
もちろん、宮澤賢治の独特のストーリーもまた良い。
兄弟のちょっとした諍いは微笑ましく、途中で登場する父親は、凛々しくててすてきだ。
それから擬音の使い方がすごい。
「……その上には月光の虹がもかもか集まりました」
なんて、一体誰がこんな擬音を思いつくだろう。
蟹の兄弟が、青い水の底で見た世界。
色がすばらしい。
五月の、光差す水の中は青磁色。
十二月のつめたい水は紺青色。
そして物語が綴られた文字の背景色は青鈍(あおにび)。
うっとりするような色使いである。
もちろん、宮澤賢治の独特のストーリーもまた良い。
兄弟のちょっとした諍いは微笑ましく、途中で登場する父親は、凛々しくててすてきだ。
それから擬音の使い方がすごい。
「……その上には月光の虹がもかもか集まりました」
なんて、一体誰がこんな擬音を思いつくだろう。
カレル・チャペック、藤本将(フェリシモ)
郵便屋さんのコルババは、あるとき宛名も差出人も書かれていない手紙を見つける。
妖精に聞いたら、その手紙はプロポーズの手紙だというので、彼は受取人である娘を探しに旅に出る。
ストーリーが愉快だった。
妖精などという可愛らしいものを登場させたと思ったら、彼らに「人間がこぼしたパンくずをゴキブリのように食べる」と言わせたり。
コルババが差出人を見付けたと思ったら、彼をけちょんけちょんに貶したり。
藤本将氏の絵もノスタルジックな雰囲気でストーリーに合っている。
郵便屋さんのコルババは、あるとき宛名も差出人も書かれていない手紙を見つける。
妖精に聞いたら、その手紙はプロポーズの手紙だというので、彼は受取人である娘を探しに旅に出る。
ストーリーが愉快だった。
妖精などという可愛らしいものを登場させたと思ったら、彼らに「人間がこぼしたパンくずをゴキブリのように食べる」と言わせたり。
コルババが差出人を見付けたと思ったら、彼をけちょんけちょんに貶したり。
藤本将氏の絵もノスタルジックな雰囲気でストーリーに合っている。
藤原一枝、はたこうしろう(岩崎書店)
ゆいは小学一年生。
ある日街に雪が降って、下校途中に遊びまくったゆいは、一人で家に向かう羽目に。
ひどい寒さにだんだん心細くなっていくゆいだが……。
主人公ゆい君がとても可愛らしくて、もうそれだけでこの絵本は合格! という気持ちになった。
周りの大人に優しくしてもらって、帰ったらお兄ちゃんにいろいろ面倒みてもらって、良かったね、ゆい君。
と、素直に思えた。
雪が降ってはしゃぐ子どもたちも本当に楽しそうで、自分が幼い頃に感じたわくわく感を追体験することができた。
ゆいは小学一年生。
ある日街に雪が降って、下校途中に遊びまくったゆいは、一人で家に向かう羽目に。
ひどい寒さにだんだん心細くなっていくゆいだが……。
主人公ゆい君がとても可愛らしくて、もうそれだけでこの絵本は合格! という気持ちになった。
周りの大人に優しくしてもらって、帰ったらお兄ちゃんにいろいろ面倒みてもらって、良かったね、ゆい君。
と、素直に思えた。
雪が降ってはしゃぐ子どもたちも本当に楽しそうで、自分が幼い頃に感じたわくわく感を追体験することができた。