ミヒャエル・ゾーヴァ、那須田淳(小峰書店)
ミヒャエル・ゾーヴァの絵と那須田淳の文章による画文集。
普通のおじさんっぽいひとが波乗りしながら本を読んでいる「午後のまどろみのなかで」。
洪水の中に小舟が浮かんでいる「小さな勝利」。
この二枚の絵は、水の描き方がとにかく素晴らしい。
うねり、落ちかかる水、白く光る波頭。
水音が聞こえてきそうな絵である。
他にフルーツたちが楽しげに笑いあう「乾杯」の明るさもいいし。
七面鳥がとぼとぼ歩いているような「なにかが道をやってくる」の暗さもいい。
ミヒャエル・ゾーヴァの絵と那須田淳の文章による画文集。
普通のおじさんっぽいひとが波乗りしながら本を読んでいる「午後のまどろみのなかで」。
洪水の中に小舟が浮かんでいる「小さな勝利」。
この二枚の絵は、水の描き方がとにかく素晴らしい。
うねり、落ちかかる水、白く光る波頭。
水音が聞こえてきそうな絵である。
他にフルーツたちが楽しげに笑いあう「乾杯」の明るさもいいし。
七面鳥がとぼとぼ歩いているような「なにかが道をやってくる」の暗さもいい。
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レオ=レオニ(好学社)
ちいさい、黒い、賢いさかな、スイミー。
スイミーは、海の中でいろいろな生き物たちに出会う。
そしてやがて、自分にそっくりな小さいさかなたちにも。
どのページにも、黒い点のようにスイミーがいる。
そのほぼ同じ絵が、さびしそうにも楽しそうにも見えるから不思議だ。
翻訳は谷川俊太郎。
一切の無駄を排した、歌うような文が、良い。
ちいさい、黒い、賢いさかな、スイミー。
スイミーは、海の中でいろいろな生き物たちに出会う。
そしてやがて、自分にそっくりな小さいさかなたちにも。
どのページにも、黒い点のようにスイミーがいる。
そのほぼ同じ絵が、さびしそうにも楽しそうにも見えるから不思議だ。
翻訳は谷川俊太郎。
一切の無駄を排した、歌うような文が、良い。
メリー・カルホーン、エリック・イングラハム(佑学社)
猫のヘンリーは、おとうさんとおかあさんと男の子に連れられて、山小屋へきた。
クロス・カントリー・スキーを楽しんだあと、一家は帰路に着くが、ヘンリーは車に乗り損ねてしまい……。
シャム猫のすらりとした肢体が美しく描かれている。
ヘンリーなら、後ろ足で立ってダンスもするし、クロス・カントリー・スキーもこなすだろうな、と思わせる絵だ。
ストーリーは出色の出来栄えとは言い難いが、終盤でヘンリーが見せる「演技」には笑ってしまった。
猫って、本当にずるくて可愛い。
猫のヘンリーは、おとうさんとおかあさんと男の子に連れられて、山小屋へきた。
クロス・カントリー・スキーを楽しんだあと、一家は帰路に着くが、ヘンリーは車に乗り損ねてしまい……。
シャム猫のすらりとした肢体が美しく描かれている。
ヘンリーなら、後ろ足で立ってダンスもするし、クロス・カントリー・スキーもこなすだろうな、と思わせる絵だ。
ストーリーは出色の出来栄えとは言い難いが、終盤でヘンリーが見せる「演技」には笑ってしまった。
猫って、本当にずるくて可愛い。
ツルゲーネフ・小川洋子(角川書店)
16歳の夏、「僕」は両親と一緒に別荘に来ていた。
そして「僕」は、隣に住む謎めいた少女に恋をした。傲慢で移り気な少女に「僕」は夢中になるのだが……。
はつ恋がこんな相手だったら災難である。
彼女に振り回される「僕」のとまどい、絶望が行間に見え隠れして、とても哀れに思えた。
イラストレーターの中村幸子氏の絵は、小川氏の文章にうまくマッチしていて良い。
すらりと白い少女の脚。夜の闇に紛れる、父親の漆黒のマント。イマジネーションをかき立てられる絵だ。
16歳の夏、「僕」は両親と一緒に別荘に来ていた。
そして「僕」は、隣に住む謎めいた少女に恋をした。傲慢で移り気な少女に「僕」は夢中になるのだが……。
はつ恋がこんな相手だったら災難である。
彼女に振り回される「僕」のとまどい、絶望が行間に見え隠れして、とても哀れに思えた。
イラストレーターの中村幸子氏の絵は、小川氏の文章にうまくマッチしていて良い。
すらりと白い少女の脚。夜の闇に紛れる、父親の漆黒のマント。イマジネーションをかき立てられる絵だ。
C・V・オールズバーグ、村上春樹(河出書房新社)
ハリス・バーディックという謎の男。
彼は14の話を考え、1冊につき、見本となる絵を1枚だけ見せてくれたが、そのあと彼は行方不明になってしまった……。
絵はすべてモノクロだが、あふれるような色彩を感じさせてくれる。
柔らかそうな子供の髪。
夜のとばりに包まれる船と揺らめく水面、ランタンの淡い光。
幻想的でどこか不穏な、魅力的な絵本であった。
ハリス・バーディックという謎の男。
彼は14の話を考え、1冊につき、見本となる絵を1枚だけ見せてくれたが、そのあと彼は行方不明になってしまった……。
絵はすべてモノクロだが、あふれるような色彩を感じさせてくれる。
柔らかそうな子供の髪。
夜のとばりに包まれる船と揺らめく水面、ランタンの淡い光。
幻想的でどこか不穏な、魅力的な絵本であった。